日産・VR38DETT

日産・VR38DETTエンジンの全貌

日産自動車が製造するVR38DETTは、V型6気筒のガソリンエンジンであり、特にスカイラインGT-Rのフラッグシップモデルのために設計されています。このエンジンは、過給機を搭載した高性能エンジンであり、排気量は3,799cc、バルブ数は24個、さらには2基のターボチャージャーで過給を行うツインターボ仕様です。

概要

VR38DETTは2007年に発表されたR35型GT-Rのために完全に新設計されたエンジンです。当初の仕様では最高出力480PS、最大トルク60.0kgf·mを持っていましたが、2011年モデルでは500PSを超え、2016年には570PSに達しました。NISMO仕様では最高出力600PS、最大トルク66.5kgf·mのパフォーマンスを誇ります。これにより、GT-Rはエンジンの軽量化と高いトルクを実現し、V型エンジンとしては歴史的な進化を遂げました。

従来のスカイラインGT-Rでは直列6気筒エンジンが使われていましたが、VR38DETTは世界レベルの動力性能を狙い、エンジンの軽量化が求められました。そのため、GT-Rとして初のV型エンジンが採用されることになりました。

エンジン設計

VR38DETTは、シリンダーブロックにおいて従来のRB26DETTから鋳鉄製からアルミニウム製に変更され、重量を軽減しました。また、高出力時の剛性を保持するために、オープンデッキ設計を捨てクローズドデッキを採用しています。低炭素鋼を使用したライナーレス構造ではプラズマ溶射が施されており、ボア間の温度を約40℃下げることに成功し、軽量化を実現しました。この構造は、熱効率の向上にも寄与し、良好な燃費を維持しながら高出力を発揮します。

シリンダーヘッドはペントルーフ型の燃焼室を持ち、吸気と排気それぞれに2つのバルブを配置。可変バルブタイミング機構が吸気側に導入されていますが、排気側では従来の形態が維持されています。また、燃焼温度の上昇に対応してエキゾーストバルブにはRB26DETTで使用されたナトリウムが封入されるなど、技術的進化も見られます。

ターボチャージャーは、IHIと共同開発されたインテグレーテッドターボが使用され、排気効率を向上させています。オイル潤滑においても、高Gがかかる環境でも性能を発揮できるように、ラテラルウェット&ドライサンプ方式が採用されています。冷却系には多層式ラジエーターとツインインタークーラーが用意され、300km/hでの走行が可能な性能を備えています。

燃費性能と排出ガス対策

VR38DETTは、全域でA/Fセンサーからのフィードバック制御を行うことが特徴です。通常の過給エンジンでは高負荷域でフィードバックが行われないことが多いですが、このエンジンは必要な量だけを計算して燃料を噴射するため、約5%の燃費向上を実現しています。

排出ガス対策としては、2次エアシステムと触媒が4つ装備されており、この設計により、平成17年基準の排出ガス規制を50%低減することが可能です。さらに、2011年モデルでは触媒の改良により75%低減レベルを達成しています。

組み立てと品質管理

エンジンの組み立ては神奈川県横浜市で行われており、通常の流れ作業ではなく、特別な技術を持つ「匠」と呼ばれる職人が手作業で一基ずつ組み立てています。品質検査は全てのエンジンに対して行われ、性能に達しないものは出荷されません。完成後にはエンジンを装備した車両全体で慣らし運転が行われ、問題がなければ市場に投入されます。

使用燃料とエンジンオイル

VR38DETTは無鉛プレミアムガソリン専用であり、他のプレミアムガソリン仕様の車両とは異なり、レギュラーガソリンの使用は厳禁です。また、指定されたエンジンオイル以外を使用した場合は保証が受けられません。このため、適切なメンテナンスが必須となっています。

他の搭載例

本エンジンはGT-R専用とされながら、他車種にも採用されることがあります。特に、ウェザーテック・スポーツカー選手権ではDSpiクラスに参加する日産DPiや、ルノー・スポールのR.S.01などに搭載されており、モータースポーツでもその実力が証明されています。さらに、市販車のカスタム例も数多く、特にD1 GRAND PRIXなどではユーザーがエンジンスワップを行っています。

VR38DETTは、その革新的な設計と高性能で、日産エンジンの象徴的存在となっています。

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