日系人とグローバリゼーション : 北米, 南米, 日本

書籍概要

『日系人とグローバリゼーション：北米、南米、日本』は、レイン・リョウ・ヒラバヤシ、ジェイムズ・A・ヒラバヤシ、アケミ・キクムラ=ヤノの3名が編纂した日系人に関する重要な学術書です。日本では2006年に発表されており、原書は2002年にアメリカで出版されました。この書籍は全米日系人博物館の研究プロジェクトに基づいており、その研究成果の一つとして位置づけられています。

本書は日本（沖縄を含む）からの移民によって形成された日系人のアイデンティティがグローバリゼーションとどのように相互作用するかを論じています。具体的には、ボリビア、ブラジル、カナダ、パラグアイ、ペルー、アメリカ合衆国からの移住者や、日本に居住する日系人の労働移民などの事例が展開されています。主張の一つとして、グローバリゼーションの影響を理解するには、日本、受け入れ国、日系人コミュニティの３つの視点を持つ必要があるとされています。

構成と内容

本書は全20章で構成され、18名の著者による多様な視点が織り込まれています。特に関心を惹くのは、日系人アイデンティティの形成や維持に関する議題です。第2部と第3部では、アイデンティティの形成にかかわる問題点と阻害要因が詳細に論じられ、著者たちはそれぞれ独自のケーススタディを取り上げています。

第1部

第1部では、日系人アイデンティティの形成とグローバリゼーションの関係について考察しています。ハルミ・ベフは日本人移民の歴史的背景を分析し、移民政策が日本の国際的な立ち位置とどのように関連しているかを示しています。移民の移動は、経済や政治の構造との関連で文脈化され、個々の移民の経験から得られる教訓が語られています。

第2部

第2部は、アイデンティティの形成をテーマに、日系人のコミュニティ形成、教育問題などについて8つの章からなる副題が設けられています。ここでは日系ブラジル人やペルーの日系人コミュニティの形成過程が詳しく述べられています。特に、ジェフリー・レッサーによる「ブラジル国民としての日系人のアイデンティティ」についての考察は、移民の立場や出稼ぎの影響を考えさせられます。

第3部

第3部では、日系人アイデンティティ形成の阻害要因に焦点が当てられています。ジェンダーや出稼ぎ現象、そして新しいアイデンティティの形成についての章がすべて日系人コミュニティが抱える問題を掘り下げており、西洋と非西洋のアイデンティティのクエスチョンも含まれています。

第4部

結論部では、編集者たちが本書の中心的なテーマを振り返り、日本民族の経験とそのコミュニティの概念がどのように「民族再生」に関連しているかを検討しています。

評判

本書は日系移民研究の分野での重要な貢献として堅く評価されています。多様な視点からのアプローチは、新たなディスカッションを創出し、日系人の文化的な背景を深く理解するための貴重な資料とされています。その一方で、情報の収集方法における不均衡や、類似事例の比較の難しさに関する指摘もあり、今後の研究の可能性を示唆しています。

このように、本書は日系人のアイデンティティ形成とグローバリゼーションの関係を複合的に考察し、学術的視点から日系人コミュニティの現状を照らし出しています。

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