日野原保

日野原保

日野原保（ひのはら たもつ、1908年5月2日 - 1999年11月20日）は、日本の鉄道技術者であり、京浜急行電鉄（京急）の副社長、東京電機の社長、会長などを務めました。

生涯

1908年、横浜市に生まれた日野原は、幼い頃から鉄道技術者を志しました。1929年に東京高等工業学校（現東京工業大学）を卒業後、世界恐慌の影響で就職難に直面しますが、開業準備中の湘南電気鉄道（後の京急）金沢工場で無給の実習生として、デ1形電車の装備品取り付け工事に従事し、最新技術を習得しました。1931年、京浜電気鉄道に入社。

戦時合併を経て京浜急行電鉄となった後、日野原は戦争で疲弊した鉄道施設や車両の現状を目の当たりにし、電車部次長時代の1952年、4ヶ月間アメリカとカナダの鉄道視察に出かけます。そこで、運転、保安、車両などの技術だけでなく、鉄道会社による多角的な経営についても見聞を広げました。

帰国後、日野原は国内初のCTC（列車集中制御装置）の導入やダイヤ改正などを主導し、鉄道の近代化に大きく貢献しました。専務を経て、1973年には副社長に就任。電気主任技術者と鉄道主任技術者の肩書きを持つ、技術部門のトップとして活躍しました。1979年に京急を退任後、関連会社の東京電機の社長、会長などを歴任しました。晩年は、白内障が進行する中、横浜市磯子区の自宅にある書庫で鉄道関連の資料に囲まれて過ごし、1999年に91歳で生涯を閉じました。

その功績により、1971年に藍綬褒章、1978年に勲三等瑞宝章を受章しています。

人物像と「日野原イズム」

日野原は、技術者として非常に厳格な一面を持っていました。例えば、700形車両の導入にあたり、他社が両開き扉を採用する中、横浜駅で国電と自社の扉の開閉を分析した結果、18メートル級の車両では片開き扉の方が構造がシンプルで美しいと判断し、採用しました。

また、前照灯を1灯にすることなど、独自の主義を持っており、その思想は「日野原イズム」と称されました。この思想に基づく設計は、後の800形車両にも継承されています。

一方で、日野原は鉄道ファンとしても知られ、自ら新車見学会を主催し、カメラを手に笑顔を見せるなど、鉄道に対する深い愛情を持っていました。アルコールはワインを嗜む程度で、生涯を電鉄マンとして誇りを持って生きた人物でした。

参考文献

週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 大手私鉄 京浜急行電鉄（10）
京浜急行今昔物語

関連項目

京浜急行電鉄
京急800形電車 (2代)
* 吉村光夫

もう一度検索