日野椀

日野椀（ひのわん）

日野椀は、滋賀県蒲生郡日野町とその周辺地域で生産されていた漆器です。その歴史は古く、平安時代には日野地域が「檜物庄」と呼ばれていた記録が残っており、この頃から木工品の製造が行われていたと考えられています。

歴史

1533年、領主の蒲生氏が日野城下町の区画整理を行い、木地師や塗師を特定の場所に住まわせました。しかし、1590年に蒲生氏郷が会津へ移封される際、漆器職人を連れて行ったため、日野の漆器製造は一時的に衰退します。この出来事が、会津漆器が日野塗の技術を取り入れて発展するきっかけになったと考えられています。

17世紀初頭、近江日野商人の活躍により、日野塗は再び活気を取り戻します。1645年頃に出版された俳諧作法書「毛吹草」には、近江日野の名産品として「五器」が挙げられています。しかしその後、近江日野商人の主要な商品が薬に変わったことや、1756年の大火によって市街地の約8割が焼失したことが原因で、日野塗は徐々に衰退し、1830年代から1840年代にかけて日野椀の製造は途絶えてしまいました。

特徴

初期に作られた日野椀は、祭器として使用されることが多く、厚手で高い高台が特徴です。安土桃山時代には、千利休などの茶人にも愛用されていたという記録があります。江戸時代には、庶民向けの漆器として、日野商人が全国を行商して販売し、その名が広く知られるようになりました。

近江日野商人館の館長である満田良順氏の研究によると、日野椀は日野だけで製造されていたのではなく、日野商人が全国各地の木地師や塗師に技術指導を行い、製造を委託し、「日野椀」というブランド名で流通させていた可能性が指摘されています。

現代の日野における椀製造

長らく製造が途絶えていた日野椀ですが、「日野椀復興の会」の木工作家である北川高次氏によって、近年再び日野町で製造が開始されました。北川氏は、「MR漆」という特殊な精製を施した天然漆を使用し、ウレタンなどの石油合成素材を一切使わない、普段使いにも耐える漆器の製造に成功しました。この復興された日野椀は、食器洗い乾燥機の使用にも耐えるという特徴を持っています。

外部リンク

日野椀ドットコム
日野商人とは（近江日野商人館）
* 「MR漆」の詳細については、京都市産業技術研究所工業技術センターの研究報告を参照。

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