旧ゴア

旧ゴア：歴史と文化が交差する世界遺産の街

旧ゴアは、インドのゴア州に位置する、かつてポルトガル領インドの首都として栄えた歴史的な都市です。別名ヴェリャ・ゴアとも呼ばれ、その街並みは、15世紀から18世紀にかけてのポルトガルの影響を色濃く残しています。

港町から首都へ

旧ゴアの起源は15世紀、ビジャープル王国によってマンドウィ川沿いの港町として建設されたことに遡ります。この地は、それまで港として機能していたゴヴァプリに代わる新たな拠点として選ばれました。ビジャープル王国のアディル・シャーヒー朝は、この都市を第二の首都とし、宮殿やモスク、寺院を堀で囲んで保護しました。

1510年、旧ゴアはポルトガル王国によって征服され、ポルトガル領インドの行政の中心地となります。以降、この都市はポルトガルのアジアにおける重要な拠点として、経済の中心地として発展を遂げました。しかし、1759年には総督の公邸がパナジへと移され、首都としての役割は徐々に低下していきます。

キリスト教布教の中心地

16世紀中ごろ、旧ゴア（特にヴェリャ・ゴア）は東方におけるキリスト教布教の中心地として重要な役割を果たしました。フランシスコ会、ドミニコ会、アウグスティヌス会、イエズス会など、多くの修道会が拠点を置き、キリスト教への改宗を推進しました。

当初は現地の慣習を尊重する姿勢が見られましたが、1540年代以降、植民地政府の支配が確立されるにつれて、改宗運動は激化。多くのヒンドゥー教寺院が破壊されました。1542年には、イエズス会士フランシスコ・ザビエルがゴアを訪れ、布教活動を行いました。

衰退と世界遺産登録

16世紀には約20万人の人口を誇った旧ゴアですが、17世紀に入るとマラリアやコレラの流行により荒廃し、都市は大部分が放棄されました。1775年には、わずか1500人しか残っていなかったと記録されています。首都機能はパナジに移転し、1843年には正式にゴアの首都となりました。

放棄された旧市街は、新首都パナジやゴア・ヴェリャ（別の都市）と区別するために、ヴェリャ・ゴア（オールド・ゴア）と呼ばれるようになりました。1961年、インド軍による武力侵攻（ゴア併合）により、ゴアとその遺産はインドに統合されました。

現在、旧ゴアには、セー大聖堂、アッシジの聖フランシス教会、サン・カエターノ教会、そして聖フランシスコ・ザビエルの聖遺物が安置されているボム・ジェズ教会など、数多くの教会が残されています。これらの教会群は、1986年にユネスコの世界遺産に登録され、その文化的・歴史的価値が世界的に認められています。

世界遺産としての価値

旧ゴアのキリスト教建造物群は、以下の世界遺産登録基準を満たし、登録されました。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
* (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの（この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている）。

旧ゴアは、ポルトガルとインドの文化が融合した独特の景観を持ち、その歴史的建造物は、過去の繁栄と苦難を物語っています。世界遺産として保護され、後世に伝えられるべき貴重な遺産です。

ゴアを訪れる際には、ぜひ旧ゴアの教会群を巡り、その歴史と文化に触れてみてください。

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