旧中国配電南部変電所

旧中国配電南部変電所は、1943年（昭和18年）に中国配電（現在の中国電力）によって、広島市南区宇品に建設された変電所です。この変電所は、宇品方面への電力供給を目的としていました。建設からわずか2年後の1945年（昭和20年）8月6日、広島市に原子爆弾が投下され、変電所も被爆しました。

爆心地から約3.79kmという比較的近い場所に位置していたため、窓ガラスは割れるなどの被害を受けましたが、建物自体は倒壊を免れました。驚くべきことに、被爆の翌日である8月7日には送電を再開しており、戦後の復興を支える重要な役割を果たしました。

その後も長きにわたり変電所として使用され続けましたが、1994年（平成6年）に中国電力が別の場所に新たな変電所を建設したことに伴い、旧南部変電所は役目を終え、空き家となりました。しばらくの間、中国電力グループのエネルギア不動産によって「E.R.E宇品御幸ビル」という名称で貸し出されていました。

2008年（平成20年）10月からは、イタリアンレストランとして新たな活用が始まりました。店舗改築の際には、外観はほとんど手を加えずに、内装の一部に旧変電所で使用されていた部材が再利用されました。しかし、このレストランも閉店し、再び建物は空き家となっていました。

2017年12月、建物を所有していた中国電力系のエネルギアL&Bパートナーズは、建物の老朽化と維持管理の困難さを理由に、土地と建物を地元の不動産会社に売却しました。2018年1月末には取り壊しが決定し、その歴史に幕を閉じました。ただし、新しい所有者は、一部のモニュメントを保存する可能性も検討していると報道されています。

この旧中国配電南部変電所は、戦時中の電力供給を支え、原爆の被害にも耐え、さらにはレストランとして市民に親しまれるなど、様々な歴史を刻んだ建物でした。取り壊されることになったのは残念ですが、その歴史は広島の記憶として語り継がれるでしょう。

関連項目

広島市郷土資料館 - 旧中国配電南部変電所の近所に位置する被爆建物です。
旧電気試験所広島出張所 - 中国電力関連企業が管理していた被爆建物ですが、現存していません。

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