旧台南州庁

旧台南州庁は、台湾の台南市中西区に位置する、国定古蹟に指定された歴史的建造物です。この建物は、日本統治時代に台南庁の庁舎として建設され、その後、台南州の行政機関としても使用されました。設計は日本人建築家の森山松之助によるもので、レンガ造りの石壁と鉄骨梁、鉄筋コンクリートを組み合わせた構造が特徴です。屋根には銅瓦を使用したマンサード屋根様式が採用され、正門には円形柱を備えた衛塔が左右に配置されています。

歴史

1910年、当時の台南庁長であった松木茂俊が新庁舎の建設を台湾総督府に陳情したことが、この建物の建設の始まりでした。当初の候補地は別の場所でしたが、最終的に台湾銀行台南支店宿舎があった現在地が選ばれました。1913年には上棟式が行われ、1916年に庁舎としての利用が開始されました。当初は正門と衛塔部分のみでしたが、1918年から1920年にかけて両翼部分が増築されました。

1920年には、台湾総督府の行政区画再編により、台南庁は台南州に改組され、庁舎も台南州庁となりました。台南州には、州轄市としての台南市と10の郡が置かれ、この建物は台南州の行政の中心となりました。また、当時は台南市役所もこの建物に入居していました。

第二次世界大戦中には、1945年の台南大空襲によって、マンサード屋根や衛塔など、木造部分が大きく損傷しました。戦後、この建物は一時的に中華民国空軍司令部の施設として利用されましたが、1969年には台南市政府が引き継ぎ、1997年まで市庁舎として使用されました。その後、市庁舎は新庁舎に移転し、旧州庁舎は長らく放置されていました。

現在

1997年、文化部（当時は行政院文化建設委員会）によって、この建物は「国立文化資産保存研究中心」と「国家台湾文学館」の開設準備が進められることになりました。1998年には、台南市と文化部との間で移管合意がなされ、建物の修復と増築計画が開始されました。2002年末に修復が完了し、2003年10月17日には「国家文学館」として再オープンしました。その後、「国立台湾文学館」と改称されました。

現在、旧台南州庁は国立文化資産保存研究センターと国立台湾文学館として運営され、多くの観光客や研究者、市民に利用されています。また、建物自体が貴重な文化遺産として保存されており、その歴史的価値を今に伝えています。建物の地下からは、大正時代の奠石とみられる石片が発見され、歴史を物語る上で重要な発見となっています。

組織

日本統治時代の台南州庁には、知事官房、内務部、警務部の3つの主要な部門があり、それぞれに各課が置かれていました。

知事官房: 文書課、会計課、税務課、調停課
内務部: 地方課、教育課、勧業課、土木課、水利課
警務部: 高等警察課、警務課、保安課、刑事課、衛生課、理蕃課

周辺の史跡

旧台南州庁の周辺には、台南孔子廟、湯徳章紀念公園、旧嘉南大圳組合事務所（現嘉南農田水利会）など、多くの歴史的な史跡が点在しています。

関連事項

国立台湾文学館
台南市政府
台南州
* 台南庁

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