旧台南水道

旧台南水道（原臺南水道）について

旧台南水道、または山上水源地は、台湾の台南市山上区に位置する、日本統治時代に建設された水道施設です。この施設は、取水場（水源地）と浄水場（浄水池）から構成されており、現在では国定古蹟として保護されています。その歴史的価値と建築美、そして豊かな自然環境が魅力です。

概要

1895年に日本の統治が始まると、台湾総督府は衛生事業の一環として水道インフラの整備に着手しました。旧台南水道は、曽文渓から良質な飲料水を台南市域に供給することを目的として、1912年に建設が開始されました。この事業は、帝国議会での予算承認を経て、10万人分の供給能力を持つ上水道を建設するものでした。

水源地には、当時のオフィス、量水器室、送水・浄水施設、発電室などが現存しています。また、設計・建設に携わった日本人技師、浜野弥四郎の像や、皇太子時代の裕仁親王が植樹したリュウキュウマツなどの老樹も残されています。園内は豊かな生態系が維持されており、水源地区と浄水池区に分かれ、総面積は56万7,801.25平方メートルにも及びます。

沿革

日本統治時代

1897年、台湾総督府の衛生顧問となったスコットランド人技師ウィリアム・K・バートンと、その助手である日本人土木技師の浜野弥四郎は、台湾各地の風土病や伝染病予防のため、上下水道インフラ整備計画を策定しました。台南でも水源、水質、実地調査が行われ、急速濾過方式による建設が提案されました。

1912年、帝国議会で総督府の予算案が承認され、263万円の事業費で工事が開始されました。当初の工期は4年でしたが、第一次世界大戦の影響で資材価格が高騰し、予算は433万円に増額されました。工期も7年延長され、1922年に竣工、10月31日に給水が開始されました。計画供給能力は10万人で、当時の台南市の人口8万人を十分に賄うことができました。

戦後

第二次世界大戦後、中華民国政府の統治下に入ると、1949年に「台南市自来水管理処（台南水廠）」となりました。戦前にあったゴルフ場は撤去され、山上苗圃として利用されました。烏山頭水庫や曽文水庫からの取水、配水量増加に伴い、1952年には加圧ポンプ室や配水管が増設されました。1965年には潭頂浄水廠が完成し、旧台南水道の機能は徐々に移転され、1982年まで稼働を続けました。

文化資産

2001年、旧台南水道は台湾歴史建築百景に選定され、2002年には台南県の県定古蹟、2005年には国定古蹟に指定されました。2007年からは修復計画が開始されましたが、所有者や管理者の調整により、本格的な再生事業は2010年の台南県市合併まで待つこととなりました。2011年には第一期の修復が完了し、浄水池エリアの見学が可能になりました。2010年には日本の土木学会選奨土木遺産にも選ばれています。

2014年には、水道会社が施設の財産権を台南市に寄贈しました。市は予算を編成し、修復・保存に着手しました。2016年の台湾南部地震で一部の建物が被害を受けましたが、修復計画を再開し、2019年秋に博物館として生まれ変わりました。

構成

水源地

水源地は曽文渓南岸に位置し、約22ヘクタールの広さがあります。飲料水の水源として長年開発が規制されてきたため、手つかずの自然が残っており、多くの動植物が生息しています。正門には、台南水道の設計に携わった浜野弥四郎の像があります。

密林区：水源地の最北端、曽文渓左岸に位置し、取水口に近いため生態系が維持されています。ここでは、ズグロミゾゴイ、モズ、蛍、蝶などの動物や、オキナグサ、蓮などの植物を観察できます。
博物館区：2019年に開館した山上花園水道博物館です。旧台北水道に次いで国内で2例目の自来水博物館となります。
濾過器室と水道弁公室：イギリス積みの赤レンガ造りの西洋建築で、内部にはドイツ製の急速濾過槽が14基配置されています。
送水ポンプ室：煉瓦と鉄筋コンクリート造りの平屋建てです。
急速濾過室：1952年に増築された木造建築物です。
浜野弥四郎像：台南水道建設に尽力した浜野弥四郎の功績を称える胸像が設置されています。
山上花園：水源地内最南端の公園で、皇太子による植樹が行われた場所です。戦前はゴルフ場、戦後は苗圃として利用され、現在は公園として整備されています。
宿舎区：職員の宿舎があった場所で、現在修復工事中です。

浄水池

浄水池は「山仔頂浄水池」とも呼ばれ、水源地から約1km離れた小高い丘の上にあります。2013年に修復工事が完了しました。ここでは、蝙蝠が生息しており、ガイドツアーで観察することができます。

量水器室：赤煉瓦と鉄筋コンクリート造りの平屋建てで、現在はビジターセンターとして利用されています。
浄水池室：1952年に増強された施設で、地下に巨大な水槽があります。現在は蝙蝠生態保育室として利用されています。

アクセス

大台南公車（興南客運運行）水源地下車
緑10：新化站 - 山上
緑11：善化転運站（台鉄善化駅） - 山上 - 新化站
* 緑2：新化站 - 台鉄新市駅 - 善化転運站（台鉄善化駅）- 玉峯里

旧台南水道は、その歴史的・建築的価値だけでなく、自然環境との調和も楽しめる場所です。訪れる際には、事前に開館時間やガイドツアーの有無を確認することをお勧めします。

もう一度検索