旧青木家那須別邸

旧青木家那須別邸：明治期の国際交流を語る歴史的建造物

栃木県那須塩原市に佇む旧青木家那須別邸は、明治時代の歴史と国際交流を物語る貴重な建造物です。1888年（明治21年）、実業家として活躍した青木周蔵氏の別邸として建築されました。1999年（平成11年）には国の重要文化財に指定され、その歴史的価値が認められています。

ドイツ建築の影響と洗練されたデザイン

設計を手掛けたのは、ドイツで建築を学んだ松崎萬長氏。日本建築学会の創設メンバーの一人でもある松崎氏の設計は、建物の随所にドイツ建築の特徴を反映しています。木造2階建ての中央棟を中心に、平屋建ての付属棟が左右に配置された建物は、自然石と玉石を積んだ基礎の上に建ち、軸組や小屋組、窓の意匠など、細部までドイツ建築の技法が用いられています。特に、蔦型と鱗型のスレート屋根は、他では見られない特徴的なデザインです。白い外壁は、青木夫妻の好みだったと言われています。

国際交流の拠点としての役割

青木周蔵氏はドイツ貴族の娘と結婚しており、その娘はドイツ貴族と結婚しました。そのため、青木家にはドイツ・オーストリア貴族の子孫が存在します。その縁から、旧青木家那須別邸は国際交流の舞台にもなりました。特に、オーストリア・リンツ市とは深い繋がりがあり、中学生の海外派遣プログラムや生徒交換プログラムなどを通して、両市は交流を深めてきました。2016年には姉妹都市提携を行い、2022年には旧青木家那須別邸で調印式が執り行われました。2019年には、青木周蔵の曾孫であるナタリー氏も旧青木家那須別邸を訪れ、先祖の足跡を辿る喜びを語っています。

移転と保存、そして現在

1989年（平成元年）、建物は栃木県に寄贈されました。その後、2008年（平成10年）に約50メートル南東側に移転し、復元・改修工事が行われました。現在は「明治の森・黒磯」の一施設として一般公開されており、多くの人々が歴史と文化に触れることができます。

周辺環境

別邸の正面には杉並木、裏手には2本のアスナロが並び、2024年2月7日に那須塩原市指定文化財に指定されました。別邸に隣接して道の駅明治の森・黒磯があり、観光の拠点としても機能しています。

まとめ

旧青木家那須別邸は、明治時代の建築技術と国際交流の歴史を伝える貴重な存在です。ドイツ建築の影響を受けた美しいデザイン、そして国際交流の舞台としての役割、そして現在も続く保存と公開の取り組みは、この建物の歴史的価値を高めています。訪れる人々に、明治時代の息吹と国際交流の温もりを感じさせる、そんな場所と言えるでしょう。

もう一度検索