アスナロ

アスナロ（翌檜、明檜）について

アスナロは、ヒノキ科アスナロ属に分類される、日本固有の常緑針葉樹です。学名を Thujopsis dolabrata といい、和名では「翌檜（あすなろ）」、「明檜（あすなろ）」とも表記されます。アスナロ属には、この種のみが現存しています。

アスナロの特徴

アスナロは、高さ30メートル、直径1メートルに達する高木です。幹は直立し、樹皮は赤褐色から灰褐色で、縦に薄く剥がれます。枝はヒノキよりも太く、互生します。葉は鱗片状で、十字対生し、小枝を扁平に覆います。葉の裏面には、明瞭な白色の気孔帯があります。

アスナロは雌雄同株で、5月頃に開花します。雄花は小枝の先端に、雌花は扁球形で、淡黄緑色をしています。球果は木質で、秋に熟します。基準変種のアスナロは、球果の鱗片に突起がありますが、変種であるヒノキアスナロでは、この突起が目立ちません。

分布と生態

アスナロは、日本固有の樹種で、冷温帯に分布しています。基準変種のアスナロは、本州、四国、九州に生育しています。一方、変種であるヒノキアスナロは、北海道南部から本州北部に分布し、蛇紋岩地帯にも見られます。

アスナロは、湿潤な場所を好みますが、スギよりも乾燥に強い性質を持っています。他の樹木と混生することが多く、純林を形成することもあります。耐陰性が高く、林の中でも成長できます。材は粘り強く、雪による幹折れは少ないですが、根が浅いため強風で倒れることもあります。

人間との関わり

アスナロは、古くから人々の生活と深く関わってきました。材は、建築、家具、風呂、土木、船、車両、器具、彫刻、経木などに利用されます。特に、青森県や石川県では重要な樹種です。また、材には精油が多く含まれており、医薬品、食品添加物、化粧品などに利用されています。

木材としての利用

アスナロの材は、耐朽性、耐水性に優れ、シロアリ害にも強いです。そのため、建築材や家具材として重宝されてきました。特に、青森県のヒバ材や、石川県のアテ材は、地域を代表する特産品です。まな板にも適しており、根元の部分の硬く丈夫な材が用いられています。

精油の利用

アスナロの材や葉には、独特の香りを持つ精油が含まれています。この精油には、抗菌性や防虫性があるため、香料やアロマオイルとして利用されます。特に、ヒノキチオールは抗菌性が強く、医薬品や化粧品に用いられています。

文化的な側面

アスナロは、各地で神社の境内に植えられたり、天然記念物に指定されたりするなど、文化的な価値も持っています。例えば、青森県では「ヒバ」として、石川県では「アテ」として、県の木に指定されています。

アスナロの名称について

アスナロの名前の由来には、諸説あります。「明日はヒノキになろう」という意味で名付けられたという説がよく知られていますが、これは俗説であるとも言われています。古くは、ヒノキを意味する「アテヒ」が転じたという説や、葉が厚いことから「アツハヒノキ」が転じたという説もあります。

地域によっても呼び名が異なり、青森県では「ヒバ」、石川県では「アテ」と呼ばれています。その他にも、「アスナロウ」、「アスヒ」、「アスダロ」、「アテビ」など、多くの別名があります。

アスナロの分類

アスナロは、基準変種のアスナロと、変種のヒノキアスナロに分けられます。ヒノキアスナロは、アスナロよりも北方に分布し、鱗形葉がやや小さいのが特徴です。また、球果の形もわずかに異なります。

アスナロ属には、アスナロ一種のみが現存しています。化石記録によると、アスナロ属はかつて東アジアに広く分布していたと考えられています。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、アスナロは低危険種（LC）に指定されています。日本では、都道府県ごとに保護されている地域もありますが、全体として絶滅の危機には瀕していません。

まとめ

アスナロは、日本を代表する樹木の一つです。その美しい姿や有用性から、古くから人々に愛されてきました。今後も、森林資源としてだけでなく、文化的な側面からも大切に守り育てていく必要があります。

参考

• - [コトバンク]]: [https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%83%AD
• - 東北森林管理局: https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/sidou/hiba/index.html

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