早乙女貢

早乙女貢について

早乙女貢（さおとめ みつぐ、1926年1月1日 - 2008年12月23日）は、歴史小説と時代小説で知られる日本の作家です。彼は満州のハルビンに生まれ、本名は鐘ヶ江秀吉です。そのペンネームには「若い娘に金品を貢ぐ」という意味が込められています。早乙女氏は慶應義塾大学文学部を中退した後、作家活動を始め、後に大衆文学の重要な作家となりました。特に、代表作『會津士魂』は1988年に吉川英治文学賞を受賞するなど、彼の名は日本文学界において不朽のものとなっています。

生い立ちと経歴

早乙女は会津藩士であり、戊辰戦争にも参加した曾祖父を持つ一家に生まれました。彼の祖父はアメリカに渡った後、再び横浜経由で上海に住むこととなりました。また、彼は16歳の時に作家を志すようになり、体の弱さから徴兵検査で不合格となります。

1946年の九州引き揚げ後、博多に住んでいた際に小説誌『叡智』の懸賞に応募し、佳作となるも原稿が現存しないという波乱に満ちたデビューを果たしました。1948年には上京し、懸賞小説への応募を通じてさまざまな雑誌や新聞で作品を発表し始めます。1952年には山本周五郎に師事し、1956年には同人誌「小説会議」を創刊しました。

作家活動

彼の執筆スタイルは、多岐にわたるジャンルに及びます。歴史小説、伝奇小説、剣豪小説、忍者小説、また現代ミステリーに至るまで、その幅広いテーマで知られています。特に『會津士魂』は彼のライフワークであり、1970年から1988年にかけて連載され、全13巻にわたる大作として多くの読者に支持されました。会津藩士たちの悲惨な運命を描いたこの作品は、早乙女自身のルーツにも深く根ざしており、彼が描く義と悲劇の要素は、彼の文体に特徴的です。

また、彼は『忍法かげろう斬り』シリーズなどの忍者物や、膨大な数の時代小説を執筆し、スリリングな展開と深いキャラクター造形で多くのファンを惹きつけました。特に、エロティシズム描写においての独自性が時代小説の中でも際立っています。1976年には『北条早雲』で吉川英治賞候補にもなりました。

社会活動と後世への影響

早乙女貢は日本ペンクラブの常任理事も務め、国際ペンクラブの大会にも出席するなど、日本文学の発展にも寄与しました。彼は『わが師山本周五郎』という回想記を執筆し、師の教えを後世に伝えました。また、様々な大衆文学の研究会にも深く関わり、「尾崎秀樹記念・大衆文学研究賞」なども設立されています。

受賞歴と遺産

1968年には直木賞を受賞し、また数々の受賞歴があります。著作は多岐にわたり、最も顕著なのは『會津士魂』やその続編『続會津士魂』です。2008年12月に胃癌で亡くなるまで、彼は精力的に執筆を続け、多くの作品を残しました。彼の作品は日本の歴史文学の重要な一部として、今も広く読まれています。

早乙女貢の作品は、会津藩に対する愛情と独自の歴史観を持つ作家の思想を垣間見ることができる貴重なものといえるでしょう。

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