早坂忠

早坂 忠

早坂 忠（はやさか ただし）は、1931年9月25日に生まれ、1995年7月10日に逝去した日本の経済学史ならびに経済思想史を専門とした研究者です。

生涯と学歴

山形県山形市に生まれた早坂は、東京大学教養学部を卒業後、同大学大学院社会科学研究科の理論経済学専攻博士課程に進み、単位取得退学という形で課程を修了しました。大学院では、経済学者の木村健康のもとで研究を進めました。

異色のキャリア

早坂のキャリアは、1958年に東京大学教養学部の助手として始まりました。その後、教養学部内の外国語部会英語科に移籍し、講師、助教授の職を経て、1983年8月には教授に昇任しました。経済学史・経済思想史を専門とする研究者でありながら、東京大学では専門分野とは異なる英語科に所属し、英語の教授として多くの学生を指導したことは、彼の経歴における特筆すべき点です。

1990年3月、早坂は東京大学を定年を待たずに退職しました。同年4月からは学習院大学経済学部の教授として新たな教職に就きましたが、1992年5月には学習院大学も退職しています。

研究と業績

早坂忠の学術的な研究活動は、特に20世紀を代表する経済学者であるジョン・メイナード・ケインズとその経済思想に深く焦点を当てていました。ケインズの著作や思想に関する研究を通じて、その複雑な理論体系の理解と普及に貢献しました。

彼は研究成果を多くの著作として発表しています。単著としては、ケインズの思想を分かりやすく解説した『ケインズ 文明の可能性を求めて』（中公新書、1969年）があります。また、海外の重要な経済学書の翻訳も多数手がけており、J.R.ヒックスの『需要理論』（村上泰亮と共訳）やJ.S.ミルの『自由論』（『世界の名著』所収）、J.R.ヒックスの『ケインズ経済学の危機』、ケインズ自身の『平和の経済的帰結』（『ケインズ全集』所収）など、経済学の発展に不可欠な文献を日本に紹介する役割を果たしました。

さらに、早坂は編著としても数多くの書籍を世に出しています。共同で編集した『近代経済学再考』や正村公宏との共著『戦後日本の経済学』、美濃口武雄との共編『近代経済学と日本』といった日本の経済学の動向を考察する著作や、『古典派経済学研究』、『ケインズ主義の再検討』、『経済学史』、『ケインズとの出遭い ケインズ経済学導入史』など、経済学史やケインズ研究に関する重要な論集や教科書を編纂しました。これらの編著は、関連分野の研究者や学生にとって貴重な資料となっています。

晩年

早坂忠は1995年7月10日にその生涯を終えました。その学術的な功績に対し、没後には正四位に叙され、勲三等瑞宝章が贈られました。経済学史・経済思想史の研究者として、特にケインズ思想の紹介と普及に貢献したその業績は、今なお多くの人々に参照されています。

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