早春スケッチブック

早春スケッチブック

『早春スケッチブック』は、1983年1月から3月にかけてフジテレビ系列の金曜劇場で放送された、全12話からなるテレビドラマです。原作と脚本は著名な作家・山田太一が手がけており、ドラマは幅広い視聴者に支持されました。また、1984年には舞台版も制作され、三越ロイヤルシアターで初演されました。その後、2005年にはドラマ本編や出演者の対談集を収録したDVDもリリースされています。

テレビドラマ版のストーリー

物語は一見普通の4人家族である望月家を取り巻く出来事から始まります。しかし、その家族はそれぞれ複雑な背景を抱えています。娘の良子は父省一の前妻との子であり、長男の和彦は母都がかつての恋人との間にもうけた子です。この家族の平穏は、都の昔の恋人である沢田竜彦の突然の出現によって脅かされます。

和彦は国立の大学に進学するため、厳しい受験勉強に取り組んでいる秀才です。しかし、そんな彼の前に現れたのは、彼の実の父親でもある竜彦です。竜彦は重い病を抱え、余命が迫っています。家族は竜彦の到来によって、それぞれが抱える悩みや不安を再認識し、「本当の家族とは何か？」という問いに直面します。

物語の進行とともに、家族は互いに思いやりを持ちながらもコミュニケーションの難しさを感じ、葛藤を繰り広げます。省一は家族を守ろうと必死に奮闘し、母都は穏やかさを保とうと努力します。そして、和彦は竜彦の存在によって自分のアイデンティティに疑問を抱くようになり、様々な感情の渦に巻き込まれていきます。

登場人物

望月都（演：岩下志麻）

望月家の母で、花屋でパートとして働きながら家族を支えています。和彦の生みの母でありながら、沢田との過去を引きずりつつも、現在の家族を何よりも大切にしています。

望月省一（演：河原崎長一郎）

望月家の父親で、信用金庫に勤務しています。誠実無比な性格ですが、受験を控えた和彦と竜彦の出現によって揺れる心を抱えています。

望月和彦（演：鶴見辰吾）

大学受験を控えた高校3年生で、優秀だが内心は不安と葛藤を抱える少年です。竜彦との出会いを通じて、家族の本質を問われることになります。

望月良子（演：二階堂千寿）

中学生であり、負けず嫌いで明るい性格を持つが、兄と竜彦を巡る複雑な家族の動きに心を痛めています。

沢田竜彦（演：山﨑努）

和彦の実の父親で、カメラマンとしての才能を持つが、病を抱えており、自身の過去に悔いを持っています。

まとめ

『早春スケッチブック』は、家族の絆とそれに伴う苦悩を描いた作品であり、同時に人間関係の複雑さを浮き彫りにします。各キャラクターの感情が繊細に描写され、観る者に深い共感を持たせるように仕上げられています。原作・脚本の山田太一の筆致により、家庭を取り巻くさまざまな問題に対する鋭い視点が提供され、観客は終始引き込まれることでしょう。

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