旭堂南陵 (4代目)

4代目 旭堂 南陵

4代目旭堂南陵は、1949年（昭和24年）9月4日に大阪府堺市で生まれ、2020年（令和2年）7月30日に70歳でその生涯を閉じた講談師であり政治家です。本名は西野康雄といい、農学修士の学位を持ち、参議院議員を1期務めるなど、多岐にわたる活動を展開しました。没後には正五位が追贈されています。

講談への道

大阪府立泉陽高等学校を卒業後、近畿大学農学部へ進学。学生時代、あがり症を克服したいという思いから落語講談研究会に入部し、講談の世界と出会います。これが後の人生を決定づける転機となりました。大学在学中に3代目旭堂南陵に師事し、1972年には「旭堂南右」の名で初高座を踏みます。大学卒業後、大阪府立大学大学院に進み、農学修士号を取得。大学院修了後の1978年、「3代目旭堂小南陵」を襲名し、真打に昇進しました。

講談師としての活躍と受賞

真打昇進後、上方講談界の中心人物として活躍します。その功績は高く評価され、数々の賞を受賞しました。1980年には松尾芸能賞新人賞、1982年には大阪文化祭奨励賞を受賞。さらに、1985年には講談奨励賞と国立花形若手金賞を、1987年には大阪府民劇場奨励賞を受賞するなど、実力派講談師としての地位を確立します。特に、文化庁芸術祭では2001年に優秀賞、2012年には大賞を受賞しており、その芸術性が広く認められていました。

講談の研究にも熱心で、大学院での修士論文は「吉野川・紀の川分水史」という農学分野のテーマでしたが、後に「明治期大阪の演芸速記本基礎研究」を出版するなど、演芸史研究にも取り組みました。

政治家としての顔

講談師としての活動の傍ら、政治の世界にも足を踏み入れます。1989年の第15回参議院議員通常選挙に日本社会党公認で兵庫選挙区から立候補し、初当選を果たしました。参議院議員としては1期を務め、特に「護憲社会党」を標榜し、日本国憲法の擁護を強く訴えました。1994年には、小選挙区比例代表並立制の導入に反対して社会党を離党。新党護憲リベラルの結党に参加します。その後、平和・市民に移籍し、1995年の第17回参議院議員通常選挙にも出馬しましたが、残念ながら落選しました。

その他の活動と晩年

政治家引退後も講談師としての活動を続け、1998年にはNHK連続テレビ小説『やんちゃくれ』に俳優として出演するなど、多方面で才能を発揮しました。講談協会との関係では、2003年に関西演芸協会と上方講談協会から除名されるという出来事もありましたが、後に提訴した裁判は和解に至っています（ただし、上方講談協会には復帰しませんでした）。

2006年8月18日、師である3代目の死後一周忌を機に、「4代目旭堂南陵」を襲名しました。また、伝統文化の継承にも関心を持ち、2017年には製造技術が途絶えていた「小山うちわ」の現物と資料を入手し、地元大阪府藤井寺市に寄贈するなど、文化財への貢献も行いました。

父が農協の理事を務めていた影響もあり、農業にも深い関心を持っていたと伝えられています。実の息子である西野晶雄氏（お笑いコンビ「シンプル」の元メンバー、現在は旭堂南也として活動）も講談師として後を継いでいます。

講談師として多数の弟子を育成し、講談界の発展に尽力しました。五代目旭堂小南陵や四代目玉田玉秀斎をはじめとする多くの講談師を育てたほか、ザ・ぼんちの里見まさと氏や紅萬子氏といった著名な芸能人が高座名を持つなど、幅広い交流がありました。

晩年も精力的に活動を続け、2019年には参議院議員としての功労により旭日中綬章を受章。2020年には第8回水木十五堂賞を受賞するなど、多年の功績が認められました。同年7月30日、膵臓がんのため兵庫県西宮市の自宅で死去しました。

4代目旭堂南陵は、伝統話芸である講談の世界に身を置きながら、政治家としても憲法擁護を訴え、また研究者としても活動するなど、異色の経歴と多才な能力を持つ人物でした。上方講談の継承と発展に大きく貢献した功績は、今も高く評価されています。

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