明美ちゃん基金

明美ちゃん基金の概要

明美ちゃん基金（あけみちゃんききん）は、心臓疾患に苦しむ子供たちを支援するために設立された、日本初の医療基金です。この基金は、1966年に心室中隔欠損という先天性心臓病により手術費用を捻出できなかった5歳の女児、明美ちゃんにまつわる報道がきっかけとなりました。産経新聞に掲載された記事が読者の心を打ち、明美ちゃんを救おうとする善意の寄付が続々と集まりました。その結果、設立された基金によって、明美ちゃんは無事に手術を受けることができました。

設立の背景と活動

1966年6月7日、産経新聞に掲載された記事は明美ちゃんの苦しい生活を描写し、「貧しさゆえに命を断たれるのか」という問いかけを投げかけました。手術費50万円は当時の農家にとって非常に大きな金額で、田んぼを売っても賄えない額でした。しかし、読者からの寄付が急速に集まり、たった1週間で425万円という金額に達したのです。このような支援のもと、産経新聞社は明美ちゃん基金を設立し、彼女の手術を行いました。

明美ちゃんの手術は成功を収め、彼女と同様に先天性心疾患に苦しむ多くの子供たちが救われることとなりました。基金による支援が始まったことをきっかけに、国の医療政策も変化し、1967年以降、心臓病を含む育成医療に対する公的支援が増加しました。

支援対象の拡大

明美ちゃん基金は、先天性心疾患に留まらず、他の難病にも対象を拡大しました。1984年には川崎病の後遺症による心臓障害を抱える10歳の女児の手術、1986年には胆道閉鎖症で肝臓移植が必要だった1歳児が米国での手術を受けることができました。1972年には、インドネシアの子供が初めて基金の支援を受けたことから、アジア諸国の子供たちの医療支援にも発展していきました。

また、基金は小児心臓病に関する学術研究の支援にも取り組んでおり、1998年からは発展途上国における医療活動への支援も行っています。特に、ミャンマーにおける小児心臓外科手術の支援では、現地医療人材の育成も目的にしており、国立循環器病研究センターの専門家が実際に手術に参加しています。

運営と適用基準

現在、明美ちゃん基金は社会福祉法人「産経新聞厚生文化事業団」により運営されています。運営委員長には国立循環器病センター名誉総長の川島康生が就任しており、基金の活動を指導しています。

基金は、主に以下の基準に基づいて支援対象を選定しています。1つ目は、先天性心臓病や川崎病の後遺症、その他の重い心臓疾患に苦しむ子供で、経済的理由により手術や入院が困難であることが認められるもの。2つ目は、医療基盤が未整備の国々で心臓疾患に苦しむ子供たちへの医療活動です。3つ目は、小児難病に関する学術研究です。支援対象者は原則として16歳以下とされています。

このように、多くの命をつなぐために作られた明美ちゃん基金は、これからも様々な活動を通じて、支援の手を必要とする子供たちに光をもたらしていくことでしょう。

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