星めぐりの町

星めぐりの町

『星めぐりの町』は、2018年1月27日に封切られた日本の映画作品です。監督・脚本を手がけたのは黒土三男氏で、愛知県豊田市を主な舞台として撮影が行われました。俳優・小林稔侍氏のキャリアで初の映画主演作となった点でも注目されます。また、本作は黒土監督にとって生涯最後の監督作品となりました。

あらすじ

物語の主人公は、丹精込めて豆腐作りに励む職人、島田勇作。彼は若き日に古都・京都でその技を学びました。早くに妻を亡くしてからは、愛知県豊田市で一人娘の志保と二人、静かに暮らしています。勇作は、手間暇かけて丁寧に作り上げた自慢の豆腐を、移動販売車で地域の人々に提供することを生業としていました。

そんなある日、島田のもとへ、警察官に連れられた一人の少年がやってきます。彼の名は木内政美。東日本大震災により、たった一人の家族も失ってしまった少年でした。政美は、島田の亡き妻の遠縁にあたる人物だったのです。

新たな環境、見知らぬ人との生活を始めた政美でしたが、経験した悲劇からか、その心は深く閉ざされています。勇作は、そんな政美の頑なな心を理解し、急かすことなく、自身が手塩にかける豆腐作りや日々の暮らしを通して、静かにその傷が癒えるのを見守ろうとします。娘の志保もまた、政美に優しく寄り添います。

父娘の温かい包容力と、共に食卓を囲み、豆腐作りに関わる中で、政美の閉ざされていた心は少しずつ溶け始め、彼らの間に確かな絆が芽生えていきます。まるで本物の家族のように、穏やかな日常が流れ始めました。

しかし、平穏を取り戻しつつあった彼らの日常でしたが、ある日突然、町を大きな揺れが襲います。かつて政美から全てを奪った震災を思い起こさせるかのような激しい揺れ。自宅で一人留守番をしていた政美の身を案じ、島田は慌てて家路を急ぎます。ですが、自宅に戻った勇作が目にしたのは、もぬけの殻となった部屋でした。政美の姿が忽然と消えていたのです。物語は、この予期せぬ出来事をきっかけに、再び大きく動き出します。

キャスト

主要な出演者には、主人公・島田勇作を演じた小林稔侍氏をはじめ、以下の俳優陣が名を連ねています。

島田志保：壇蜜
弥生（女将）：高島礼子
木内政美：荒井陽太
坂崎五郎（巡査）：神戸浩
社長：平田満
加藤（社長の部下）：六平直政
土門まき：佐津川愛美
佐久間信（修理工）：石田卓也
沢本健司：小林健
小雪（中居）：小林千晴

製作

本作の企画・原案・監督・脚本は黒土三男氏が一貫して担当しました。プロデューサーは中尾幸男氏、撮影は釘宮慎治氏が務めるなど、熟練のスタッフが集結しています。愛知県豊田市での撮影にあたっては、とよたフィルムコミッションがロケ協力を行いました。製作は豊田市と映画「星めぐりの町」実行委員会が共同で行い、配給・宣伝はファントム・フィルムが担当しました。制作プロダクションはエースプロダクション・ケイセブンです。

この作品は、喪失の悲しみから立ち上がり、再び人との繋がりの中で希望を見出していく人々の姿を、温かく、そして時には厳しく描き出しています。特に主人公と少年、そして娘が織りなす人間模様と、丁寧に作られる豆腐が象徴する温もりが、観る者の心に響く作品です。

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