星を継ぐもの

星を継ぐもの

ジェイムズ・P・ホーガンが1977年に発表したSF小説『星を継ぐもの』（原題：Inherit the Stars）は、発表以来多くの読者を魅了し続ける傑作です。ありえない現実と事実が複雑に絡み合い、読者はその謎を解き明かす過程で、人類の起源という壮大なテーマに引き込まれます。ホーガンのデビュー作であり、ハードSFの代表作の一つとして、SFファンから熱狂的な支持を受けています。

物語の始まり

物語は、月面で発見された一体の遺体から始まります。真紅の宇宙服を身に着けたその人物は、一体何者なのか？ 各国の機関に照会しても、月面での行方不明者は存在しません。遺体を地球に運び、C14法で年代測定を行った結果、なんと5万年前に死亡した人物であることが判明します。チャーリーと名付けられたその遺体の正体は、謎に包まれていました。

謎の解明

物理学者のヴィクター・ハントは、ニュートリノを使用して物質を透過撮影できる「トライマグニスコープ」を駆使し、チャーリーの遺体と所持品の調査を開始します。しかし、調査が進むにつれて、矛盾に満ちた事象が次々と明らかになります。現代技術では製造不可能な超小型「原子力パワーパック」や、地球とは相容れない暦法が記された手帳など、謎は深まるばかりです。

生物学者のクリスチャン・ダンチェッカーは、チャーリーの遺体が地球人と酷似していることから、彼が地球出身であると断言します。しかし、同じ場所で発見された「地球産の魚に似た水棲生物」の肉体構造は、地球の生物とは根本的に異なっていました。

壮大なスケール

物語は、木星の衛星ガニメデで発見された宇宙船の残骸へと展開します。そこには、人類には未知の知性体である「ガニメアン」の遺体と、数百万年前の地球の生物たちが積み込まれていました。さらに、月の裏側では、土砂に埋もれた基地や設備が発見され、チャーリーが、高度な技術文明を担った人類と同種の種族「ルナリアン」の一人であることが判明します。

そして、小惑星帯に存在したとされる幻の惑星ミネルバの存在が浮かび上がります。ミネルバには地球とは異なる生態系があり、ガニメアンや謎の水棲生物は、ミネルバの生物であることが明らかになります。5万年前の戦争は、地球人類とミネルバのガニメアンとの間の星間戦争だったのでしょうか？

シリーズ

『星を継ぐもの』は、「巨人たちの星シリーズ」として知られる以下の続編へと続きます。

『ガニメデの優しい巨人』
『巨人たちの星』
『内なる宇宙』
『ミネルヴァ計画』

特に3作目の『巨人たちの星』で物語は一応の完結を迎え、4作目の『内なる宇宙』までには長い間隔がありました。2011年からは星野之宣によって漫画化もされています。

読者を魅了するSF

『星を継ぐもの』は、SFとしての面白さはもちろんのこと、人類の起源や宇宙の謎に迫る壮大なスケール、そして、緻密な科学考証に裏打ちされたリアリティが、多くの読者を魅了し続けています。まだ読んだことのない方は、ぜひこの機会に手に取ってみてください。

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