星一徹

星一徹：巨人の星を支えた男

星一徹は、川崎のぼる作画、梶原一騎原作の野球漫画・アニメ『巨人の星』における主人公、星飛雄馬の父であり、物語を彩る重要な人物です。右投げの三塁手として現役時代を過ごし、選手としては右投げ左打ちでしたが、引退後は飛雄馬の指導や中日ドラゴンズコーチ時代には右投げ右打ちに転向しました。アニメ版では加藤精三が声優を務めました。

波乱万丈な人生

一徹の生年は原作では明記されていませんが、現役時代に川上哲治を呼び捨てにしていたことなどから、川上と同世代であると推測されています。アニメ版の初登場が昭和32年、原作が昭和33年だとすると、この時点で37歳か38歳だったと推測できます。『新・巨人の星II』の最終回で川上と同い年だとすると、58歳になります。

アニメでは詳細な過去が描かれています。貧しいながらも野球への情熱を燃やし、建設会社勤務のかたわら草野球に励んでいました。そこで川上に才能を見出され、巨人軍に入団。順調に活躍するも、戦争によって南方戦線へ召集されます。復員後、肩を負傷したものの、妻・春江や戦友の励ましにより、プロ野球に復帰。送球の遅さをカバーする「魔送球」を編み出しましたが、走者にぶつける危険性から野球界を去りました。

巨人軍時代と魔送球

昭和16年から18年頃、一徹は巨人軍に在籍し、川上哲治からは「長嶋茂雄を超える幻の三塁手」と評されるほどの活躍をしました。しかし、戦争で肩を負傷。帰国後は野球への意欲を失いかけましたが、妻や戦友の支えから再起を果たし、巨人軍に復帰します。

しかし、肩の負傷により送球が遅くなったため、「魔送球」という奇策を考案。打者の目前で急激に曲げる送球で一塁へ送球するこの技は、時折走者に当たってしまう危険性を孕んでおり、川上哲治から批判を受け、プロ野球界から引退することになります。

飛雄馬へのスパルタ教育

引退後は日雇い労働者として家族を養いながら、野球への未練を断ち切れずにいました。妻の死後、息子・飛雄馬への過酷な野球特訓に没頭するようになります。アニメでは、春江の存命中、飛雄馬に野球をさせることに反対していたという描写も見られます。

この頃の特訓は常軌を逸しており、成長期の飛雄馬に「大リーグボール養成ギプス」を装着させたり、「火の玉ノック」など、過酷な訓練を繰り返します。飛雄馬は幼い頃、父を憎んでいましたが、それでも野球の楽しさに目覚め、巨人への入団を決意します。

親から師へ、そして敵へ

飛雄馬が青雲高校在学中、一徹は青雲高校野球部の監督を務めますが、東京都大会直前に退任。その後、中日ドラゴンズのコーチに就任し、飛雄馬と対決します。中日コーチ在任中はオズマを獲得し、彼を「大リーグボール打倒ギプス」で鍛え上げ、飛雄馬と対決させます。

その後、伴大造を巨人からトレードで獲得し、彼を飛雄馬の刺客に育て上げます。最終的に、飛雄馬は伴との死闘を制し、一徹は息子の成長を認め、球場を去ります。

新巨人の星以降

『新・巨人の星』以降は、老境に差し掛かりつつも、肉体的・精神的には衰えず、アスレチッククラブで激しいトレーニングをこなす姿も描かれています。飛雄馬の巨人復帰には当初反対していましたが、復帰後は伴と共に協力し、飛雄馬の「大リーグボール右1号」開発をサポートします。

アニメ『新・巨人の星II』では、飛雄馬の日本シリーズ優勝を見届けた後、静かに生涯を終えます。一方、漫画版では最後まで存命し、飛雄馬を支え続けます。

一徹の人物像

一徹は、昭和時代の理想的な父親像、そして過酷なスパルタ教育の象徴として、時代を超えて様々な解釈がなされています。息子への深い愛情と、厳格な指導、そして時代とのズレなど、複雑な魅力を持つ人物像が、多くの人の心に深く刻まれています。 彼の行動は常に飛雄馬の成長、そして「巨人の星」になるという目標達成のために行われたものであり、その過程における彼の行動は、現代の視点からは疑問視される面も多いものの、その本質には揺るぎない愛情と信念があったことが見て取れます。野球人としては、卓越した才能を持ちながら、チームプレーや協調性という面では課題を残しました。しかし、その厳格な指導は、飛雄馬だけでなく、彼と関わった多くの選手たちの成長にも繋がるものだったと言えるでしょう。 一徹の生き様は、時代を超えて人々の記憶に残り続ける、複雑で魅力的な存在です。

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