星野芳郎

星野芳郎：技術評論家としての生涯

星野芳郎（ほしの よしろう、1922年1月13日 - 2007年11月8日）は、日本の技術評論家です。東京府に生まれ、松本高等学校理科甲類を経て、1944年に東京工業大学電気化学科を卒業しました。戦時中は内閣技術院参技官補、海軍少尉兵学校教官などを歴任。戦後、文部省科学官補を経て、1946年に民主主義科学者協会の設立に参加しました。その後、立命館大学や帝京大学で教鞭を執る傍ら、技術評論家として、技術論や現代技術史の研究に情熱を注ぎました。

マイカーという言葉の普及

星野芳郎の業績として特筆すべきは、1961年に発表した著書『マイ・カー』です。この書籍は、日本における本格的なモータリゼーション黎明期において、自家用自動車を所有し運転する人々に向けて書かれた啓蒙書でした。この著書を通じて「マイカー（my car）」という和製英語が広く一般に普及し、現代に至るまで広く使われるようになりました。単なる自動車の解説書に留まらず、当時の社会現象や技術進歩を捉えた先見性のある内容が高く評価されています。

多岐にわたるテーマでの執筆活動

星野芳郎は、技術評論家として、幅広い分野で精力的に執筆活動を行いました。そのテーマは技術革新、環境問題、エネルギー問題、情報化社会、そして軍事技術や歴史に至るまで多岐にわたります。特に技術と社会の関係、技術がもたらす倫理的な問題など、深く掘り下げた考察は、現代社会においても重要な視点を提供しています。

技術と社会の関係を問う

星野芳郎の著作は、単に技術を紹介するだけでなく、技術が社会にどのような影響を与えるのか、また、人間はどのように技術と向き合うべきなのか、という本質的な問いを投げかけています。高度技術社会における問題点や、技術革新の功罪を指摘し、持続可能な社会のあり方を模索しました。その主張は、現代社会が抱える様々な課題に対する示唆に富んでいます。

主要な著作

星野芳郎は、数多くの著作を残しています。以下にその一部を挙げます。

『技術論ノート』 (1948年) - 初期における技術論の研究を示す著作。
『マイ・カー よい車わるい車を見破る法』 (1961年) - マイカーという言葉を広めた代表作。
『技術革新』 (1958年) - 技術革新の本質と社会への影響を分析。
『技術と人間 技術革新の虚像と実像』 (1969年) - 技術革新の表裏を考察。
『高度技術社会への抵抗』 (1970年) - 高度技術社会の問題点を指摘。
『瀬戸内海汚染』(1972年) - 環境問題への警鐘。
『未来文明の原点』 (1980年) - 未来社会のあり方を考察。
『情報化社会をどう生きるか』 (1983年) - 情報化社会における課題と対応。
『技術と政治 日中技術近代化の対照』 (1993年) - 技術と政治の関わりを分析。
『インターネットの虚像』 (1997年) - インターネット社会の課題を指摘。
『技術と文明の歴史』 (2000年) - 技術史を俯瞰する。

その他にも、児童向けの科学読み物や、共著、翻訳も数多く手がけています。星野芳郎の著書は、技術に対する深い洞察力と、社会に対する責任感を兼ね備えたもので、現代社会を生きる私たちにとって、貴重な知見を与えてくれるでしょう。

参考文献

自著の紹介文より
* 荻上悦子著「春寂寥 旧制松本高等学校人物誌」 2008年


星野芳郎は、その生涯を通じて、技術と人間の関係について考え続けました。彼の著作は、現代社会の様々な問題を考える上で、重要な視点を提供しています。

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