映像人類学

映像人類学の概念

映像人類学（えいぞうじんるいがく）は、民族学者によって行われる視覚的表現の研究を広範に扱う社会人類学の一分野です。特に民族写真や映画、1990年代以降はニューメディアにも焦点を当てています。この分野は、科学や視覚文化の研究者によるアプローチが重ねられ、ますます多様性を増しています。

この分野は、しばしば民族誌映画と混同されることがありますが、実際にはそれ以上の広がりを持っています。舞踏やパフォーマンスの研究、博物館や資料保管の実践、視覚芸術、さらにはマスメディアの制作と受信までも網羅し、人類学的視点から分析を行います。また、視覚的表現がどのように共同利用され、社会において機能するかも重要な研究テーマです。近年の研究は、仮想現実や拡張現実、モバイルアプリに至るまで、最新の技術がいかに人類学の研究や実践、教育に影響を与えるかを探求しています。

歴史的背景

映像人類学の起源は、1880年代に遡ります。文化人類学が学問として確立される以前から、民族学者たちは研究の道具として写真を利用していました。これにより、絶滅の危機にある社会の生活様式を記録し、後世に残そうとする試みが見られていました。

映画製作に関しては、ノンフィクションやドキュメンタリー映画の発展と密接に関連しています。特にエスノフィクションは、民族誌映画の一サブジャンルとしての位置を確立しています。最初期の民族誌映画は、リュミエール兄弟の発明した映画機器を用いて制作され、代表的な作品としては、ロバート・フラハティによる1922年の「極北のナヌーク」があります。この映画は、北極圏の人々の生活を描き、伝統的なイヌイットの暮らしに焦点を当てましたが、近代化の要素を排除する形で制作されました。この手法は、その後の多くの民族誌映画に受け継がれています。

1940年代から1950年代初頭にかけて、多くの人類学者たちがマスメディアや視覚表現に人類学的な視点を取り入れていくようになりました。この時期には、ジャン・ルーシュ、ジョン・マーシャル、ロバート・ガードナー、ティム・アッシュ、デビッド・マクドゥーガルといった著名な映像人類学者が登場します。

アメリカでは、1958年にハーバード大学のピーボディ考古学民族学博物館に映画研究センターが設立され、映像人類学が学術的に展開されることになりました。イギリスのマンチェスター大学でも1987年にグラナダ視覚人類学センターが設立され、人類学と映画制作の教育が行われています。これまでに、このセンターからは300以上の映画が制作され、多くの卒業生がこの分野で活躍しています。学術書も出版され、1967年にはJohn Collier, Jr.によってこの分野の初の標準的教科書が執筆されました。

まとめ

映像人類学は、視覚表現を通じて人間の文化や社会を探求する学問です。技術の進化に伴い、映像人類学は新たな視点や手法を取り入れており、今後の展開が非常に楽しみです。

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