春口廣

春口 廣

春口 廣（はるぐち ひろし、1949年7月3日 - ）は、日本の著名なラグビー指導者であり、現在は関東学院大学名誉教授や女子ラグビーチーム横浜TKMの監督を務めている。専門はスポーツ科学。

静岡県に生まれた春口氏は、少年時代は野球に親しんだが、愛知高校でラグビーの世界に足を踏み入れる。日本体育大学への進学は、小柄ながらも当時のラグビー部長、綿井永寿氏に才能を見出されたことがきっかけであった。同大学の専攻科を修了し、選手としてはスクラムハーフやフランカーとして活躍した。

大学卒業後、神奈川県立向の岡工業高等学校で体育教師を務めた後、1974年に関東学院大学ラグビー部の監督に就任する。当時のチームは関東大学ラグビーリーグ戦グループの3部に所属し、部員はわずか8名、練習場も貝殻が混じる劣悪な環境であった。春口氏は日体大の後輩である河西光氏をコーチとして招き、大学ラグビー界の強豪校に肩を並べるべく、本格的なチーム強化に着手した。最初の2年間はリーグ戦で一度も勝利を挙げられない厳しい時期を過ごしたが、3年目についに初勝利を掴んだ。

地道な努力が実を結び、1982年にはチームを1部リーグへと昇格させる。そして、1990年にはリーグ戦で初めて栄冠を勝ち取り、全国大学ラグビーフットボール選手権大会にも初出場を果たした。監督就任から20年が経った1994年頃には、練習環境は劇的に改善され、鮮やかな天然芝のグラウンドが3面整備され、部員数も200名近くに増加していた。春口氏の持ち前の明るい性格と、過度に厳格でない上下関係に基づく指導スタイルは、「やる気さえあれば成長できるチーム」として選手たちの間で支持を集めた。

チームは着実に力をつけ、1998年には悲願の全国大学選手権初優勝を達成する。以後、関東大学ラグビーリーグ戦で11回の優勝、全国大学ラグビーフットボール選手権大会で6回の優勝という輝かしい実績を積み重ね、関東学院大学は大学ラグビー界を代表する強豪チームへと変貌を遂げた。春口氏はその育成手腕が高く評価された。

しかし、2007年にチームに暗い影が落ちる。同年11月、部員2名が大麻取締法違反（栽培）の容疑で逮捕・起訴されるという前例のない不祥事が発生し、チームは活動停止を余儀なくされた。当初は慰留され監督に留まるも、その後に複数の部員による大麻吸引が発覚したことを受け、同年12月に引責辞任した。この不祥事では、関与した部員が書類送検されるなど、チームの信用は大きく失墜した。

監督辞任後、2010年には関東学院大学ラグビー部の部長として現場に戻る。さらに2013年2月には再び監督に復帰したが、同年12月には成績不振を理由に解任された。2015年3月末に関東学院大学を定年退職し、名誉教授の称号を得る。2023年からは女子ラグビーチームである横浜TKMの監督として、再び指導の道を歩んでいる。

長男の春口翼氏も関東学院大学でラグビー選手として活躍し、卒業後はリコーブラックラムズに所属した経験を持つ。

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