春日井建

春日井建について

春日井建（かすがいけん、1938年12月20日 - 2004年5月22日）は、昭和から平成にかけて活躍した著名な歌人です。彼は初期において幻想的かつ耽美的な作風で知られ、その後肉体と精神に関する観念を探求する美学へとスタイルを変えていきました。亡くなるまでの晩年には、病との対峙を題材とした作品を均整のとれた文語体で詠むようになり、彼の歌は深い感情的な奥行きを持つものとなりました。前衛短歌運動の代表的な存在とされる彼の作品は、時代の流れとともに変化し続けました。

経歴

春日井建は愛知県丹羽郡（現在の江南市）で生まれました。父親の春日井瀇と母親の春日井政子も歌人であり、それぞれは太田水穂に師事していました。建は彼らの影響を受けて育ち、歌作りに対する感受性を磨いていきました。12歳のころから名古屋市昭和区に住み、その後の人生を名古屋で過ごすこととなります。

彼は名古屋市立北山中学校、名古屋市立向陽高等学校を経て南山大学文学部英文科に入学します。在学中は中井英夫に認められ、1958年には20歳で「あの頃の未青年」と名付けられた50首を、角川書店が発行する「短歌」に掲載しました。この作品は彼のキャリアの中で重要な位置を占めることになります。

1960年には塚本邦雄や岡井隆、寺山修司らと共に同人誌『極』を創刊し、同年に初の歌集『未青年』を出版しました。この歌集は三島由紀夫によって序文が寄せられ、「われわれは一人の若い定家を持ったのである」と称賛されました。この時期、彼はテレビやラジオ、舞台に興味を持ち始め、台本執筆や演出なども手がけるようになります。

その後、彼は1962年にNHKドラマ「遥かな歌・遥かな里―枇杷島由来」を執筆し、これがきっかけでテレビやラジオ、舞台の仕事が増えましたが、そのために一時的に作歌から離れることとなります。1970年には歌集『行け帰ることなく』を発表しましたが、しばらくの間作歌の活動を中断することになります。

1973年、演劇集団「グループ鳥人」を設立し、「わが友ジミー」や「お父さまの家」といった公演を行いました。しかし1979年に父親が亡くなり、彼は中部短歌会の主幹となり、再び作歌を始めることになります。1980年には超結社「中の会」を発足し、その活動を通じて新たな表現に取り組みました。1985年には愛知女子短期大学の教授となり、教鞭を執ります。

晩年には、がんの治療を受けつつ創作活動を続け、2003年には歌集『井泉』を出版しました。2004年、中咽頭がんのため生涯を閉じましたが、その後も作品が発表され続けています。その影響は後世の歌人たちにも大きく、彼の足跡は日本の歌の世界に深く刻まれています。

受賞歴

春日井建はその作品で多くの賞を受賞しています。1982年には名古屋市芸術奨励賞、1993年には愛知県文化選奨文化賞、そして1998年には第34回短歌研究賞を受賞するなど、その才能を広く認められました。また、2000年には第27回日本歌人クラブ賞を受賞し、彼の作品と彼自身の地位を一層強固なものとしました。

著作

彼は多くの著作を残しており、代表作には『未青年』や『行け帰ることなく』、さらには歌集『白雨』、『井泉』などがあります。また、晩年のエッセイ集『未青年の背景』も受け入れられています。これらの作品は、彼の独自の詩的世界を形成し、多くの人々に影響を与えました。彼の歌は、ただの言葉の集合体ではなく、深い感情や思索を含むものであり、読む者に多くの考えを促します。

春日井建の作品は、時代を超えて愛され続け、多くの後進たちにインスピレーションを与えています。

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