春日俊吉

春日俊吉：日本の山岳遭難史に名を刻んだ登山家と作家

春日俊吉（かすが しゅんきち、1897年-1975年7月7日）は、大正から昭和時代を生きた登山家であり、ノンフィクション作家として知られています。本名は伊藤照雄。現在の千葉県山武市（旧松尾町）で生まれました。

早稲田大学英文科卒業後の1920年、読売新聞社に入社。新聞記者としての職務のかたわら、精力的に登山家、そして作家としての活動を行いました。

彼の山岳への関心の始まりは、学生時代に起きた木曽駒ヶ岳の大規模な遭難事故でした。この衝撃的な出来事が、春日俊吉の生涯におけるテーマ、山岳遭難への深い関心を決定づけました。以後、彼は数々の山岳遭難事故に関する著作を世に送り出し、日本の山岳文化に大きな足跡を残すことになります。

春日俊吉の業績の中でも特に重要なのが、『日本山岳遭難史』（三省堂、1933年）です。これは『中央公論』と『山と渓谷』に掲載された複数の記事をまとめたものであり、日本の山岳遭難に関する記録としては先駆け的な存在と言えるでしょう。本書は、多くの読者に山岳事故の危険性と重要性を訴えかけました。しかし、一方で、参考文献の不足や、記述が感傷的で興味本位な部分が多いという批判も存在します。

春日俊吉は『日本山岳遭難史』以外にも、数多くの山岳遭難に関する著作を残しています。『登山遭難の実相と対策』や『山岳遭難記』（全6巻）といった、山岳遭難の現状や対策を詳細に解説した作品から、『山と雪の墓標 松本深志高校生徒落雷遭難の記録』のような、特定の遭難事故を克明に記録した作品まで、その著作は多岐に渡ります。また、『山の遭難譜』なども彼の代表的な作品として挙げられます。これらを通じて、彼は多くの読者に山岳の危険性と、自然に対する畏敬の念を伝えようとしたと考えられます。

春日俊吉の作品は、山岳遭難という悲劇的な出来事を記録し、後世に伝えるという重要な役割を果たしました。彼の著作は、登山者の安全意識の向上に貢献し、日本の山岳文化の発展に寄与したと言えるでしょう。ただし、現代の視点から見ると、参考文献の不足や記述の偏りといった問題点も指摘されており、今後の研究においては、これらの点を踏まえた上で、彼の業績をより正確に評価していく必要があると言えるでしょう。彼の生涯と作品は、日本の登山史、そしてノンフィクション文学史において、重要な一章を刻んでいると言えるでしょう。

彼の功績を称え、鵬翔山岳会による『春日俊吉鎮魂譜』も存在します。これは、春日俊吉の業績と人生を後世に伝える重要な資料と言えるでしょう。

もう一度検索