春日村 (新潟県)

春日村（かすがむら）は、かつて新潟県中頸城郡に存在した歴史ある村落です。戦国時代の名将として知られる上杉謙信の居城、春日山城が築かれた地として歴史に名を刻んでいます。現在は新潟県上越市の一部を構成しており、特に市の行政の中枢である上越市役所が旧村域に立地していることでもその名残をとどめています。

村の歴史は、明治時代の市町村制度の整備とともに始まります。1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行を受けて、中頸城郡内に点在していた複数の村々の区域をもって春日村が発足しました。この時、村の区域を形成したのは、旧来の春日村、中門前村、大豆村、中屋敷村、寺分村、岩木村、宮野尾村、牛池新田、そして上正善寺村といった地域でした。これら複数の村が合併し、新たな行政単位としての「春日村」が誕生したのです。

その後、地域内の再編成が進む中で、春日村はさらなる変遷を経験します。1901年（明治34年）11月1日、中頸城郡に属していた春日村、高志村、国府村の三村が合併し、改めて広域な「春日村」が成立しました。この合併により、村の規模は拡大し、地域社会の統合が進みました。

しかし、昭和時代に入ると、日本の地方自治体を取り巻く状況は変化し、市町村合併の流れが加速します。春日村もその流れの中にあり、1955年（昭和30年）2月1日、高田市に編入されることとなりました。これにより、春日村という行政単位はその歴史に幕を下ろしました。編入された高田市は、その後の合併を経て現在の上越市の一部となっています。

村の領域、あるいは旧村域には、歴史的な見所が点在しています。中でも特筆すべきは、国の史跡にも指定されている春日山城跡です。この城跡は、戦国時代に上杉謙信の本拠地として栄え、その堅固さと規模から難攻不落の城としても知られました。現在は遺構が残るのみですが、広大な敷地からはかつての繁栄と、謙信の存在感を今に伝えています。歴史愛好家や登山者にとって、重要な訪問地となっています。

また、春日村は、政治家として日本の中央政界でも活躍した塚田十一郎氏の出身地としても知られています。塚田氏は、新潟県知事を務めたほか、参議院議員や衆議院議員として国政に携わり、さらには郵政大臣として国務にもあたった人物です。地方自治体の長から国政の要職までを歴任した塚田氏の存在は、この地の歴史における重要な人物の一人として記憶されています。

このように、春日村は短い行政期間ながらも、春日山城に代表される歴史的な重要性や、地域出身の著名な人物を有するなど、記憶されるべき特徴を持つ村でした。現在、その名は行政区分としては残っていませんが、地域名称や歴史的な文脈の中でその存在感は受け継がれています。特に、上越市役所が旧村域にあることは、かつての春日村が現在の市の中心部の一部を形成していることの象徴と言えるでしょう。新潟県の廃止市町村の一つとして、その歴史的な役割は今日の地域社会にも影響を与えています。

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