春日部たすく

春日部たすく（かすかべ たすく、本名：春日部弼、1903年5月26日 - 1985年9月16日）は、日本の水彩画界に多大な影響を与えた画家です。福島県会津若松市に生まれた彼は、会津若松市永和尋常高等小学校、そして会津中学校（現・福島県立会津高等学校）を卒業後、川端画学校で研鑽を積みました。

当時、日本の画壇においては西洋美術への憧憬が強く、「油絵こそが真の絵画である」という風潮が支配的でした。水彩画は、その軽視された存在でした。しかし、春日部たすくは水彩画の可能性を強く信じていました。透明感あふれる色彩、繊細な描写、そして自由な表現力。それらは油絵とは異なる水彩画特有の魅力であり、彼はその魅力を多くの人に伝えたいと願っていたのです。

この強い信念のもと、春日部たすくは小堀進、荒井直之助ら同志7名と共に、昭和15年（1940年）、水彩連盟を設立しました。これは、水彩画の地位向上と普及を目的とした画家の団体であり、日本の水彩画界に大きな転換をもたらす契機となりました。

水彩連盟設立以前、水彩画は趣味の域を出ないものと見なされることが多く、本格的な美術表現として認められるには至っていませんでした。しかし、水彩連盟の活動を通して、数多くの水彩画家が育成され、様々な水彩画作品が発表されるようになりました。展覧会の開催や出版活動、そして後進の指導など、水彩連盟は精力的に活動を行い、水彩画の認知度向上に大きく貢献しました。

春日部たすくは水彩連盟の中心人物として、その発展に尽力しました。彼の卓越した技術と表現力、そして情熱あふれる指導は、多くの水彩画家を育成し、日本の水彩画界全体のレベル向上に繋がりました。彼は、水彩画の可能性を信じ、その魅力を日本中に広めるため、生涯を捧げたのです。

春日部たすくの功績は、単に水彩画の技術を高めたというだけでなく、水彩画という表現方法に対する価値観そのものを変えたことにあります。彼の活動によって、水彩画はもはや趣味の域を超え、本格的な美術表現として広く認められるようになりました。その功績は、日本の美術史においても重要な位置を占めています。

彼は1985年9月16日に亡くなりましたが、彼の残した作品と、水彩連盟を通した活動は、現在も日本の水彩画界に大きな影響を与え続けています。多くの後継者たちが、彼の志を受け継ぎ、水彩画の可能性を追求し続けているのです。春日部たすくは、日本の水彩画史に燦然と輝く、偉大な画家のひとりと言えるでしょう。

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