春野百合子

春野 百合子 (はるの ゆりこ)

春野百合子は、浪曲の名跡として知られています。この名跡は二代にわたって受け継がれ、それぞれ異なる時代においてその影響を誇示してきました。ここでは初代と二代目、二人の百合子について詳しく見ていきます。

初代春野百合子 (1900年 - 1946年)

初代百合子は本名を森八重といい、福岡県博多出身です。父親は祭文語りの名人であり、幼い頃から彼女は父から浪曲の技術を学びました。9歳で「都花子」として浪曲界に足を踏み入れ、15歳になると名前を改名し「春野百合子」として本格的に活動を始めます。

彼女は2代目広沢虎吉の女流団「成美会」で活躍し、冨士月子と共に関西浪曲界の女流の代表として名を馳せました。東京でも人気を博し、有楽座や国技館で独演会を開催し、好事家による後援会も設立されました。彼女の美貌と美声は舞台での存在感を際立たせ、観衆を魅了しました。

戦時中は四国に疎開し、その後も軍や工場を訪問するなどして活動を続けましたが、1946年に46歳でこの世を去ります。彼女の得意演目には「金毘羅利生記」や「五郎正宗」、「義士伝」などがあります。二代目吉田奈良丸との関係も広く知られており、二人の実の子供には二代目百合子と春野百合若がいます。

二代目春野百合子 (1927年 - 2016年)

二代目の春野百合子は、佐伯昌という本名で、大阪府に生まれました。彼女は日出高等女学校を卒業した後、昭和女子薬学専門学校に入学します。しかし、教育を受けるうちに浪曲に対する興味が薄れました。母の死を経て、彼女は浪曲師の道へと進む決意をします。

1948年には父、2代目奈良丸に入門し、稽古を重ねた結果、5ヵ月後に中座で襲名。近松門左衛門や井原西鶴の作品を基に、新たな浪曲のスタイルを確立し、文芸浪曲の先駆者となりました。特に彼女の得意とする世話物は情緒豊かで、観客から高く評価されました。特に「西鶴五人女」シリーズは彼女の十八番として知られています。

彼女の功績は多く、1967年には「樽屋おせん」で大阪府文化祭賞を受賞し、1969年には「暗闇の丑松」で文化庁芸術祭優秀賞を得ます。さらに、1993年には「女殺し油地獄」と「高田馬場」で芸術選奨文部大臣賞を受賞し、1994年には紫綬褒章が授与されました。

二代目春野百合子は、長年にわたり曲師の大林静子とコンビを組み、有名な舞台を多く送り出しました。大林の死後も若手曲師の一風亭初月と新たにコンビを組んで舞台に復帰し、浪曲親友協会の会長を務め、多くの後進を育てました。

2016年10月25日、彼女は89歳で老衰により逝去しましたが、その死は浪曲界における大きな損失とされ、多くの人々に愛されたことを物語っています。彼女の受賞歴には、1999年に受けた勲四等宝冠章や、芸団協芸能功労者表彰などがあります。

結論

春野百合子の名跡は、浪曲界における重要な地位を占めています。初代と二代目のそれぞれの業績は、浪曲の魅力を今に伝え、後世に多くの影響を与え続けています。彼女たちが築き上げた基盤の上に、今後の浪曲が成長していくことが期待されるでしょう。

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