宝冠章

宝冠章について

概要

宝冠章（ほうかんしょう）は1888年（明治21年）1月4日に日本で制定された数少ない女性専用の勲章です。この勲章は、皇后によって天皇の名のもとに授与され、創設当初から現在に至るまで女性のみを授与対象としています。

日本における勲章は、男性限定のものが多く、女性に対する公正な栄典の提供が求められていました。そのため、既に制定されていた旭日章や大勲位菊花章に対して、女性向けの勲章が必要とされ、宝冠章が生まれました。この勲章は、国際儀礼の観点からも重要視されています。

意匠

宝冠章のデザインは、古代の女性皇帝の冠を模しており、縦長の楕円形の中央に竹枝がデザインされています。各等級において、冠の飾りとして用いられる天然真珠は特に珍しく、豪華な印象を与えます。大綬章から藤花章までには全体が金メッキされており、楕円の内側には青色、外側は赤色の七宝が施されています。

更に、宝冠章は、特に大綬章において鳳凰の飾りが目立ち、全体的に美しい仕上げがなされています。デザインは、天皇や皇后が授与する際の形式を重視しており、勲等によって異なる鈕の形状なども考慮されています。特に宝冠大綬章には108個もの天然真珠が使われており、その製造コストは非常に高価です。

授与と運用

2003年（平成15年）に実施された栄典制度の改正により、宝冠章は女性皇族への叙勲と外国からの賓客に対しての儀礼的授与に限定されました。この改正により、旭日章や桐花章など他の勲章が男女問わず授与されるようになり、宝冠章の重要性が変わりました。授与対象は「瑞宝章に値する功績を持つ女性」に位置づけられ、最高位の宝冠大綬章は現在まで女性皇族だけが受けることができる特別な勲章として扱われています。

これまでに授与された方々は、その多くが皇族または国家のトップレベルの女性であり、一般の女性には授与された例がないため、非常に珍しい存在です。ただし、1961年（昭和36年）の奥むめお氏や1998年（平成10年）の中根千枝氏のように、社会的に著名な女性も宝冠章を受章しています。

また、宝冠章は、国賓が来日する際には儀礼的な交換にも使われます。皇族や国家元首の配偶者に授与されることが多く、欧州の王族や外国の公式訪問者にとって重要な授与対象となっています。例えば、元イギリス首相のマーガレット・サッチャー氏がこの勲章を受章された例が知られています。

結論

宝冠章は、制定から今日に至るまで、日本の女性に対する特別な勲章として独自の地位を維持してきました。その美しい意匠や授与背景は、日本文化における女性の勲章に対する重要性を伝えています。日本の勲章制度の中で残り続ける宝冠章は、今後も重要な役割を果たし続けるでしょう。

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