春雨 (春雨型駆逐艦)

駆逐艦「春雨」の歴史と遭難事件

駆逐艦「春雨」は、明治の日本海軍において重要な役割を果たした艦艇の一つです。「春雨」という名は、春に降る細い雨を意味し、天象や気象に由来しています。春雨型駆逐艦のネームシップであり、同名の艦艇が他にも存在するため、「春雨 (初代)」や「春雨I」として区別されています。

艦の建造と歴史的背景

春雨は、1903年6月26日に横須賀造船廠で竣工し、軍艦籍に編入されました。日露戦争が勃発すると、春雨は重要な戦闘に参加し、旅順口攻撃や黄海海戦に従事します。しかし、戦の途中、1904年10月11日には旅順沖で触雷し、艦体の一部を喪失してしまいます。修理後の1905年には日本海海戦にも参加し、戦局に寄与しました。

日露戦争後の変遷

1905年12月12日には、駆逐艦が独立した艦種として認められ、春雨は軍艦籍から除かれました。日露戦争の終結後も、春雨は海軍の任務を続けますが、1911年11月、三重県の的矢湾近くで遭難する運命に直面します。これが春雨の最後の任務となります。

遭難事件の概要

1911年11月24日、春雨は大荒れの海に遭遇し、操作を誤って菅崎半島に座礁しました。乗組員は激しい気象条件の中で救助を試みますが、多くが海に投げ出される危険な状況に陥りました。生存者は兵曹長以下20名で、士官は誰一人として助かりませんでした。地元の村人たちは勇気を振り絞り、重油が漂う荒れた海へ飛び込み、数人を救助しました。

地元住民による救助活動

救助活動では、相差青年会が中心となり、時間をかけて乗組員の救助に尽力しました。その映像は忘れられないものとなっています。春雨の艦長は、最後の瞬間まで乗組員を守るために戦い、艦が沈む際には「天皇陛下万歳」と叫びながら、乗組員と共に運命を共にしました。救助された8名は日本赤十字病院に運ばれ、一命を取り留めましたが、大多数が命を落としました。

喪失とその後の記憶

艦は最終的に1911年12月28日に除籍され、1912年には売却処分が決定しました。春雨の遭難から数十年後、事故現場に記念碑が建てられ、事故を忘れないようにと願う地元住民たちの気持ちが込められています。

2011年には遭難から100年目を迎え、記念碑のもとで追悼祭が行われました。春雨の事件は、駆逐艦としての歴史を持つ艦艇の重要な一幕であり、波乱に満ちた海軍の歴史を物語っています。住民の献身と同艦乗りの悲劇的な運命が、この事件を現在においても生き続ける伝説としています。

もう一度検索