的矢湾

的矢湾

的矢湾（まとやわん）は、三重県志摩半島の東側に位置する、東西約10kmにわたる細長い湾です。志摩市と鳥羽市にまたがり、典型的なリアス式[[海岸]]の地形をしています。この湾は、南に位置する英虞湾と同様に、溺れ谷として形成されました。

概要

的矢湾は、カキや真珠貝の養殖が非常に盛んな地域として知られています。その美しい景観は観光地としても人気があり、沿岸にはテーマパーク「志摩スペイン村」をはじめ、ホテルやゴルフ場などが点在しています。

湾の入口は、南側の安乗崎（あのりざき）と北側の菅崎（すげさき）に挟まれ、幅約2kmとなっています。入口の内側には渡鹿野島（わたかのじま）があり、湾の中央部は幅がわずか100mほどに狭まっています。この狭窄部には的矢湾大橋が架けられており、南側の丘には志摩スペイン村が位置しています。湾の面積は約8km²、海岸線の長さは約40kmです。

伊雑ノ浦

的矢湾の奥深くには、広大な内湾である伊雑ノ浦（いぞうのうら）が広がっています。この内湾は、文献によって「伊雑の浦」や「伊雑浦」とも表記されます。伊雑ノ浦は、広義の的矢湾の約6分の1の面積を占めていますが、浦に流れ込む磯部川（神路川）、野川、池田川の流域[[面積]]は、浦の面積の35倍にも及びます。一見すると湖のように見えるほど波が穏やかな入り江です。西岸には近鉄志摩線が走り、志摩磯部駅と穴川駅が設けられています。

伊雑ノ浦の水深は非常に浅く、最深部でも3m程度です。大干潮時には8割以上が干潟となり、大雨が降ると全域が淡水化する特徴があります。この環境を利用して、ヒトエグサ（あおさ）やウナギの養殖が行われています。また、1970年代にはカモの狩猟場としても知られていました。

伊雑ノ浦淡水湖化計画

志摩市は、大きな河川がないため、長年水不足に悩まされてきました。そのため、伊雑ノ浦を淡水湖化して灌漑用水を確保する計画が持ち上がりました。この計画は、当時の農林省が主体となり、「志摩総合開発計画」として進められました。

しかし、1956年、伊雑ノ浦や的矢湾でアオサやカキの養殖に従事していた漁業者たちは、漁業への悪影響を懸念して計画に反対しました。彼らは、的矢かきの生みの親である佐藤忠勇の研究データを添えた陳情書を提出し、計画は中止されました。この反対運動の際に提出された陳情書は、志摩市歴史民俗資料館に保存・展示されています。

代替の水源として、1960年には磯部町恵利原の神路川にダムを建設する計画が立てられ、1968年には恵利原ダム、1974年には神路ダムが完成しました。しかし、現在でも水不足が解消されないため、南勢水道の多気浄水場から一部送水を受けています。

脚注

大島襄二「変貌する水産養殖業地域―的矢湾のカキについて―」『人文地理』第9巻第1号、人文地理学会、1957年、16-28頁、NAID 130000994426。
志摩市におけるあおさ養殖の歴史
人文社観光と旅編集部 編『県別シリーズ25 郷土資料事典 三重県・観光と旅』人文社、昭和49年6月1日改訂新版、139p.

関連項目

パールロード
安乗の人形芝居
伊雑宮
磯部の御神田
的矢カキ - 三重ブランド
三重県道750号阿児磯部鳥羽線（県道船）
京路山

外部リンク

* 志摩市あおさプロジェクト

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