昭和史発掘

『昭和史発掘』の概要

『昭和史発掘』（しょうわしはっくつ）は、著名な作家松本清張が手掛けたノンフィクション作品であり、日本の近代史を改めて考察する重要な一冊です。この作品は、1964年から1971年にかけて『週刊文春』に連載され、合計300万部を超える印刷が行われました。1967年には第1回吉川英治文学賞を、1970年には第18回菊池寛賞を受賞しました。これらの受賞は、作品の品質や影響力を物語るものです。

連載と内容

『昭和史発掘』は、陸軍の秘密費用問題を取り上げた田中義一に始まり、二・二六事件にまで関連する数々の出来事を描いています。松本は関係者への取材や膨大な資料を基に、各事件とその背後にある事情を克明に描写しています。

この作品は、単行本第13巻では74ページにわたる人名索引が付いていますが、文庫版にはその索引が収録されていないため、詳細に興味のある読者はご注意ください。また、単行本には再録されなかった小話がいくつかあり、特に第16話「政治の妖雲・穏田の行者」と第18話「お鯉事件」は特筆に値します。これらは本来番外編として執筆されたものであり、松本自身の指示で単行本化に際して外されました。

執筆の背景とエピソード

連載を開始するきっかけとして、当時の『文藝春秋』編集長であった田川博一が『週刊文春』に異動し、松本清張と親交のあった田川がこの連載を実現させる要因となったとされます。この背景には、半藤一利が言及したエピソードもあります。藤井康栄、松本の担当編集者は、連載前半において編集長からの干渉を受けた経験を持っており、「章が短いほうがいい」との要望があったそうです。しかし、後半の二・二六事件では、編集長が交代し自由に執筆できる環境が整ったことで、作品の内容はさらに深く掘り下げられることになりました。

影響と評価

このノンフィクションは、歴史的な出来事に基づく情報が豊富で、研究者からも多く引用されることがありますが、筒井清忠はその情報の信憑性について注意を促しています。松本の作品は、どこまでが確実な調査に基づくもので、どこまでが彼自身の推理なのかがわかりにくい部分があるため、取り扱いには慎重さが求められます。

関連書籍

『昭和史発掘』の内容をさらに深めたい方には、松本が発見した新しい史料を収録した『二・二六事件 研究資料』や、連載当時の藤井康栄が書いた回想録『松本清張の残像』が有用です。また、初版未収録のエピソードを含む『対談―昭和史発掘』や『昭和史発掘 特別篇』もおすすめです。これらの書籍は、松本清張の志や当時の社会情勢をより深く理解する手助けとなるでしょう。

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