昭和57年台風第10号

概要

1982年（昭和57年）7月に発生した台風10号は、冷夏と梅雨明けの遅れにより、全国的に大雨が続いていた時期に発生しました。特に7月23日には、梅雨前線の影響で九州地方を中心に記録的な豪雨（昭和57年7月豪雨）が発生し、西日本は大きな被害を受けていました。その直後に上陸した台風10号は、東日本にも被害を拡大させ、全国的な大災害となりました。この災害では、死者数が400人を超え、甚大な被害をもたらしました。

台風10号は7月23日に日本の南東海上で発生し、発達を続けました。最盛期の7月29日には、中心気圧900hPa、最大風速65m/sにまで成長し、暴風域の直径は740kmにも達しました。これは、1977年以降で10番目に大きな規模でした。8月1日には紀伊半島南海上を北上し、2日0時頃には中心気圧970hPaで愛知県渥美半島に上陸、同日早朝には富山湾から日本海へと進みました。その後、暴風域は消滅し、15時には温帯低気圧に変わって東北地方に接近しました。

この台風により、四国地方東部から東北地方にかけて広い範囲で大雨となり、近畿地方から東北地方にかけては暴風が吹きました。奈良県日出岳では8月1日に日降水量844mmを記録したほか、静岡県石廊崎では10.15ｍの有義波高を観測し、1976年の観測開始以来の最高記録となりました。特に近畿地方、北陸地方、関東地方での被害が大きく、全国で死者・行方不明者は95人に達しました。

被害

この台風による被害は、死者・行方不明者95人、被害額5,916億円に及ぶ甚大なものでした。

交通機関への影響

三重県: 国鉄名松線が豪雨により全線不通となり、特に被害の大きかった伊勢竹原駅 - 伊勢奥津駅間はバス代行となりました。復旧には1983年6月1日までかかりました。
静岡県: 東海道本線富士川橋梁の下り線と廃線の一部橋脚が流失し、75日間単線運行（片側交互通行）となりました。復旧は同年10月15日でした。また、富士川に架かる万栄橋も一部が流出しました。
奈良県: 関西本線王寺駅では、葛下川の氾濫により、駅構内に留置されていた電車100両が床上まで冠水しました。
長野県: 小海線佐久海ノ口駅-信濃川上駅間が18日間不通となりました。

その他

東海道線の鉄橋流失などの甚大な被害をもたらしたため、台風の英名「ベス（Bess）」はこの台風限りで使用中止となり、次順からは「ブレンダ（Brenda）」という英名が使用されることになりました。

まとめ

昭和57年台風第10号は、梅雨末期の豪雨と重なり、日本全国に大きな被害をもたらした災害でした。特に交通網への影響は大きく、復旧に時間を要しました。また、この台風の被害があまりにも甚大だったため、台風の英名が変更されるという異例の事態も発生しました。この災害は、自然災害の恐ろしさと、その対策の重要性を改めて認識させるものとなりました。

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