昭和62年台風第19号

昭和62年台風第19号

昭和62年（1987年）に日本に大きな被害をもたらした台風の一つに、国際名「Kelly」と呼ばれる第19号があります。この台風は、1987年において日本列島に上陸した唯一の台風であり、その後の広範囲にわたる影響から人々の記憶に残っています。

発生と発達

この台風は、1987年10月11日にフィリピンの東方洋上で発生しました。熱帯の暖かい海水からエネルギーを得て勢力を強めながら北上し、発生から数日後の10月15日には最も強い状態に達しました。その後、日本の南海上を北西に進み、次第に勢力をやや弱めながらも、日本の陸地へと接近しました。

日本列島縦断の経路

台風第19号が日本の陸地に初めて到達したのは、10月17日未明のことです。午前4時30分頃、四国の高知県室戸市付近に上陸しました。上陸後、台風は四国を縦断し、そのまま本州へと進みました。同日朝には兵庫県加古川市付近に再上陸し、近畿地方を横断しました。京都府舞鶴市付近から日本海へ進みましたが、その勢力は衰えず、東北地方へと向かいました。そして、夕方頃には青森県と秋田県の県境付近に三度目の上陸を果たしました。その後、日本列島をさらに北上し、同日午後9時には温帯低気圧へとその性質を変えました。わずか一日足らずで日本の南端から北端近くまでを駆け抜ける、特異な進路をたどった台風でした。

被害状況

この台風は、日本列島を通過する際に秋雨前線を活発化させたため、広範囲で記録的な大雨となりました。また、中心付近の強い風や、台風本体の通過による暴風も各地で発生しました。これらの影響により、西日本から北日本にかけて、多くの地域で浸水や建物への被害が相次ぎました。特に浸水被害は全国で約25,000棟にのぼり、生活基盤に深刻な影響が出ました。人的被害も発生し、9名の方が命を落とし、17名の方が負傷されました。

時期的な特徴

昭和62年台風第19号の大きな特徴の一つは、10月という比較的遅い時期に日本列島に上陸したことです。10月に台風が日本に上陸したのは、8年前の1979年に発生した昭和54年台風第20号以来のことでした。また、この台風のように四国へ上陸したケースも、同じく8年前の1979年の昭和54年台風第16号以来となります。統計が開始された1951年以降の記録を振り返ると、この台風は上陸した日付が一年の中で8番目に遅い事例として挙げられます。

観測された記録

台風第19号の接近・上陸に伴い、各地で強風が観測されました。特に最初に上陸した高知県室戸市では、最大瞬間風速53.8メートルを記録しました。これは当時としても非常に強い風であり、沿岸部を中心に甚大な被害をもたらす要因となりました。

まとめ

昭和62年台風第19号は、1987年という年に唯一日本に上陸し、その特異な経路と時期、そして秋雨前線との相互作用によって、全国的に広範囲かつ深刻な被害をもたらした台風として記憶されています。特に浸水被害の規模や、10月としては遅い上陸であった点など、気象災害の多様性を示す事例の一つと言えます。

もう一度検索