是川遺跡

是川遺跡（これかわいせき）

青森県八戸市是川中居に位置する是川遺跡は、縄文時代晩期を代表する遺跡であり、国の史跡にも指定されています。2021年には「北海道・北東北の縄文遺跡群」としてユネスコ世界文化遺産に登録され、その価値は世界的に認められました。

概要

是川遺跡は、新井田川沿いの標高10～30メートルの台地に広がる複合遺跡です。具体的には、縄文晩期を中心とする中居遺跡、縄文前期・中期の遺物を含む一王寺遺跡、縄文中期の堀田遺跡の3つを総称して「是川遺跡」と呼んでいます。

各遺跡の特徴

中居遺跡: 低湿地（沢地形）に位置し、大量の木の実の殻や、完形の土器、石器、漆塗りの植物性遺物などが発見されています。土坑墓からは、赤色顔料がまかれた人骨も出土しており、当時の葬送儀礼を知る手がかりとなっています。
一王寺遺跡: 縄文土器の年代をめぐる論争「ミネルヴァ論争」の舞台となった場所です。貝塚も見つかっており、獣骨や骨角器などが出土しています。
堀田遺跡: 縄文時代中期・後期の土器片や、中期末の円形竪穴建物跡、後期の集石遺構が見つかっています。弥生時代前期の籾圧痕土器が出土しており、この地域への稲作伝播の時期を知る上で重要な資料となっています。

発掘の歴史

明治時代から土器・石器が出土していましたが、本格的な発掘調査は1920年（大正9年）に泉山岩次郎と泉山斐次郎によって開始されました。彼らによって収集された6000点以上の遺物は、後に八戸市に寄贈され、現在に伝えられています。1932年には、郷土史家によって遺跡の保全を願う石碑が建立されました。

近年の調査と整備

1993年（平成5年）以降、縄文学習館建設に伴う発掘調査や、中居遺跡の範囲確認調査などが行われ、新たな発見がありました。これらの調査で出土した遺物も、重要文化財に追加指定されています。2024年度（令和6年度）からは遺跡公園の整備事業が開始され、2030年度（令和12年度）の完成を目指し、より魅力的な史跡公園へと生まれ変わる予定です。

主な出土品

是川遺跡からは、縄文土器、石棒、土偶、漆塗り容器など、多様な遺物が出土しています。特に、漆塗りの技術や、女性を模した土偶などは、当時の精神文化を反映していると考えられています。これらの遺物は、縄文晩期に東北地方一帯に広がった亀ヶ岡文化圏の内容を示す貴重な資料とされています。

中居遺跡の特殊な泥炭層からは、クルミ、トチ、ナラなどの種子、木製の腕輪、耳飾り、弓、琴、櫛など、当時の生活用具や祭祀具が多数発見されています。弥生時代前期の遠賀川系土器も出土しており、他地域との交流があったことを示唆しています。

出土品は主に是川縄文館に所蔵されており、一般公開されています。

文化財

重要文化財（国指定）: 是川遺跡出土品（考古資料）。八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館に保管されています。
国の史跡: 是川石器時代遺跡。

関連施設

遺跡周辺には、是川縄文館のほかに、是川考古館、八戸市歴史民俗資料館などがあります。これらの施設では、是川遺跡から出土した遺物や、八戸地域の歴史・文化に関する資料が展示されています。

現在、縄文学習館は整備改修のため休館しており、復元建物も撤去されていますが、2030年度には遺跡公園としてリニューアルオープンする予定です。

アクセス

自動車: 東北自動車道八戸ICから約10分。
* 公共交通機関: JR八戸線本八戸駅からバスで「縄文学習館前」または「是川縄文館」下車。

是川遺跡は、縄文時代の生活や文化を今に伝える貴重な遺跡です。出土品の見学や、遺跡周辺の散策を通じて、縄文時代の人々の暮らしに触れてみてください。

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