時代をこえて

『時代をこえて』（ときをこえて）

概要

松山千春のキャリアにおいて、1981年5月21日に発表された本作『時代をこえて』は、彼にとって通算7作目となるオリジナルアルバムです。この作品は、当時の日本の音楽シーンにおいて、シンガーソングライターとして確固たる地位を築いていた松山千春が、新たなサウンドと表現を追求した重要な一枚と位置づけられます。

作品背景

本作は、松山千春が自身の音楽活動を四つの時代区分に分けたうち、「承の時代」と名付けられた時期に制作された3部作の最終章にあたります。先行してリリースされたアルバム『浪漫』、そして『木枯しに抱かれて』に続く形で世に送り出されました。これらの作品群は、彼の音楽性の変遷と深化を示すものとして注目されています。なお、本作には、アルバムに先行して発表され、大ヒットを記録したシングル曲「長い夜」およびそのカップリング曲「わかれ」は収録されていません。

後年の1993年には、日本コロムビアからリリースされた『松山千春オリジナル・アルバム・コレクション』シリーズの一環として、Vol.03として再発売されており、現在も多くのファンがこのアルバムを手に取ることが可能です。

制作

『時代をこえて』の制作における最大の特長は、松山千春にとって初の海外レコーディングが敢行された点にあります。録音作業は、アメリカ合衆国のハワイとロサンゼルスで行われました。異国の空気の中でのレコーディングは、楽曲に新たな息吹をもたらし、それまでの作品とは一線を画すサウンドプロダクションが実現しました。この海外での挑戦は、松山千春の音楽世界の幅をさらに広げる契機となったと言えるでしょう。

アートワーク

アルバムのジャケット写真は、当時、タレントとしても人気を博していたおすぎ氏によってプロデュースされました。独特の視点を持つおすぎ氏の手腕により、アルバムの世界観を視覚的に表現するアートワークが創り出されています。特に印象的なのは、ジャケットに使用されている松山千春の肖像画です。この肖像画は、彼の故郷である北海道足寄町にあるご実家の車庫に、今も大切に掲げられているというエピソードが知られており、作品に込められた想いをより深く感じさせます。

参加ミュージシャン

本作のサウンドを支えたのは、日本国内はもとより、海外からも一流のミュージシャンたちが集結した豪華な布陣でした。彼らの卓越した演奏が、松山千春の楽曲に豊かな響きと奥行きを与えています。

主要な参加ミュージシャンは以下の通りです。

E.Guitar: 松原正樹
A.Guitar: 笛吹利明, 杉本喜代志
Bass: 長岡道夫
Drums: 島村英二
Keyboard: 大原茂人
Percussion: ラリー須永
Trumpet: 数原晋
Horn: 長岡慎, 山城雅之
Flute: 衛藤幸雄, 相馬充
Steel Guitar: 尾崎孝
Sax: 斉藤清
Trombone: 新井英治
Oboe: 坂宏之
Harmonica: 八木のぶお
Marimba: 金山功
Alto Sax, Clarinet: Jake H. Concepcion
Strings: JOE アンサンブル
Backing Vocal: Vennette Glound, Maxine Willard, Stephanie Spruill

彼らの高度なテクニックと感性豊かな演奏は、アルバム全体の完成度を高め、まさに『時代をこえて』聴き継がれるべき音楽作品たらしめています。

評価・位置づけ

『時代をこえて』は、松山千春にとって初の海外レコーディングという新たな試み、そして国内外のトップミュージシャンとの共演によって生み出された意欲作です。「承の時代」という自身のキャリアの一区切りを飾る作品として、これまでの音楽性を踏まえつつも、サウンド面でのさらなる進化を感じさせる一枚と言えるでしょう。彼の豊富なディスコグラフィーの中でも、特に制作背景や参加アーティストの点で特筆すべきアルバムとして、今も多くのファンに愛され続けています。

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