時代小説大賞

時代小説大賞

時代小説大賞は、講談社が主催し、1990年から1999年までの10年間にわたって開催された公募新人文学賞です。時代小説という特定のジャンルに焦点を当て、新たな書き手の発掘を目指しました。

この賞の大きな特徴の一つは、その高額な賞金にありました。受賞者には賞金1000万円が贈られ、これは当時の文学賞の中でも特に注目される金額でした。受賞作は主催である講談社から書籍として出版され、広く読者の手に届けられました。さらに、第8回までの受賞作品は、朝日放送によってテレビドラマとして制作され、全国ネットで放送されるという、他の文学賞には見られないメディアミックス展開が行われたことも特筆されます。これにより、受賞作は書籍としてだけでなく、映像作品としても多くの人々に触れる機会を得ました。

時代小説大賞は、その短い歴史の中で、日本の文壇において重要な役割を果たしました。特に、後に権威ある直木三十五賞を受賞する乙川優三郎氏や松井今朝子氏といった、実力派作家を輩出したことは大きな功績と言えます。彼らの受賞は、この賞が新人作家の登竜門として機能していたことを示しています。

惜しまれつつも、時代小説大賞は第10回をもってその歴史に幕を下ろしました。しかし、その間に生み出された優れた時代小説作品や、世に送り出された作家たちの活躍は、現在も日本の時代小説界に影響を与えています。

以下に、全10回の受賞作と受賞者、および賞の選考に携わった委員の方々を記します。

受賞作一覧

第1回（1990年）：鳥越碧『雁金屋草紙』
第2回（1991年）：羽太雄平『本多の狐』
第3回（1992年）：吉村正一郎『西鶴人情橋』
第4回（1993年）：藤井素介『流人群像　坩堝の島』（刊行時改題：『海鳴りやまず 八丈流人群像』）
第5回（1994年）：大久保智弘『わが胸は蒼茫たり』
第6回（1995年）：中村勝行『蘭と狗』
第7回（1996年）：乙川優三郎『霧の橋』
第8回（1997年）：松井今朝子『仲蔵狂乱』
第9回（1998年）：平山寿三郎『東京城の夕映え』
第10回（1999年）：押川國秋『八丁堀慕情・流刊の女』

選考委員

尾崎秀樹
津本陽
半村良
平岩弓枝
* 村松友視

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