羽太雄平

羽太雄平は、1944年1月14日に台湾で生まれ、東京新宿区牛込で育ちました。本名を羽太康雄といいます。東京都立港工業高等学校を中退後、スキューバカメラマン、スチールカメラマン、ルポライター、広告制作会社経営など、多岐にわたる職を経験しました。1989年、小説『完全なる凶器』で小説CLUB新人賞を受賞し、作家としてのキャリアをスタートさせました。

1991年には、『本多の狐』で第2回時代小説大賞を受賞し、注目を集めます。この作品では、日光東照宮に隠された徳川家康の秘宝をめぐり、忍び「本多の狐」と多士済々な登場人物たちが繰り広げる争奪戦が描かれています。初期の作品では、伝奇時代小説を多く手掛けていましたが、その後、作風を広げ、北関東の架空の小藩を舞台にした「与一郎シリーズ」や、市井を舞台にした「江戸闇」シリーズなど、幅広い作品を発表しました。

羽太雄平は、作家活動の他に、数々のユニークな逸話を持っています。中学生時代には、短足を気にし、自転車のチューブを使って足を長くしようとしたり、高校生時代には、さいとう・たかをに弟子入りを許されるほどの画才があったそうです。また、潜水夫免許を持っており、スキューバダイビングの分野では、国内のレジェンドとして知られています。1960年代には、日本では数少ない水中カメラマンとして活躍し、羽田・日本航空350便墜落事故の水中捜索や、豊洲レスキューでのスキューバダイビングの指導にも携わりました。築地の150万円マグロボチャン救出にも貢献したというエピソードも残っています。東京・高円寺ではスキューバ＆サーフショップを開業しましたが、当時はまだ時期尚早で、流行には至らなかったようです。スチールカメラのハウジング製作においては、国内外でも定評があり、広告代理業務よりも収入が多かったと述べています。ゴルフの腕前もプロ並みで、生涯ベストスコアは68を記録しています。

受賞歴
1989年 第13回小説CLUB新人賞（『完全なる凶器』）
1991年 第2回時代小説大賞（『本多の狐』）

主な作品
『本多の狐 徳川家康の秘宝』（1992年）
『竜の見た夢』（1993年）
『江戸闇小路』（1994年）
『黎明の風』（1995年）
『乱の裔』（1995年）
『峠越え』（1996年）
『芋奉行青木昆陽』（1997年）
『江戸闇草紙』（1997年）
『されど道なかば』（1998年）
『江戸闇からくり』（2000年）
『二河白道 智臣本多正信伝』（2002年）
『無頼の辻 中山道活人剣』（2003年）
『百万石秘訓伝説』（2004年）
『家老脱藩 与一郎、江戸を行く』（2006年）
『曙光』（2008年）（改題『黒船の密約』）
『転び坂 旗本与一郎』（2010年）
『流れ者 旗本与一郎』（2012年）

アンソロジー
『風の孤影』（2001年）

羽太雄平は、その多彩な経歴と豊かな才能を生かし、時代小説の世界で独自の地位を確立した作家と言えるでしょう。彼の作品は、歴史的な背景にエンターテイメント性を加え、読者を魅了し続けています。

もう一度検索