景帝 (漢)

前漢の皇帝、景帝

景帝（けいてい）は、前漢の第6代皇帝であり、中国史上においても名君と称される人物です。父である文帝の治世を引き継ぎ、その善政は「文景の治」と後世にまで讃えられています。また、後漢の創始者である光武帝・劉秀や、蜀漢の創始者である昭烈帝・劉備も、景帝の末裔を称しています。

生涯

治世初期

景帝は、文帝の五男として誕生しました。兄たちが早世したため、母の竇氏が皇后となったことで嫡子となり、皇太子の地位を継承しました。皇太子時代には、従兄弟である呉の世子・劉賢を口論の末に殺害してしまうという事件を起こしています。この事件は朝廷と呉王の関係を悪化させましたが、文帝の政治的な配慮により事態は収束しました。しかし、この事件は後に起こる「呉楚七国の乱」の伏線となります。

紀元前157年、景帝は皇帝に即位しました。彼は父・文帝の政策を基本的に継承し、消極的な外交政策と倹約に努めました。また、重農政策を推進し、減税を実施することで社会の安定に貢献しました。この時代、人口の9割が農業に従事していたとされています。文帝の時代と合わせて「文景の治」と称えられる繁栄の時代を築き上げました。

呉楚七国の乱

当時の諸侯王は、領内の徴税権や官吏の任命権を持つなど、半独立国のような状態でした。この問題は前代からの課題であり、文帝も対策を講じていましたが、景帝の時代になると、この問題は深刻化していきます。当初、景帝は文帝の方針を継承していましたが、御史大夫の鼂錯（ちょうそ）の献言を受け、諸侯王の権力削減に着手しました。この強硬策は諸侯王たちの反発を招き、紀元前154年、呉王・劉濞（りゅうび）を中心に「呉楚七国の乱」が勃発しました。反乱軍は当初優勢でしたが、周亜夫（しゅうあふ）の活躍により鎮圧されました。

この反乱の鎮圧後、景帝は諸侯王の領地を官僚である相（しょう）に統治させ、諸侯王は税収を受け取るのみとしました。これにより、諸侯王の権力は大幅に削減され、中央集権体制が確立されました。また、呉楚七国の乱鎮圧の功労者であった周亜夫を、皇太子冊立をめぐる対立から丞相を解任します。その後、景帝は初めて自身の側近を丞相に任命しました。この人事は、それまで元勲とその一族からのみ任命されていた丞相の権力を低下させ、皇帝権力を飛躍的に強化させる出来事となりました。

宗室

景帝の后妃と子には以下のような人物がいます。

正室：薄皇后（廃后）、王娡（後の皇后）
皇女：平陽公主、南宮公主、隆慮公主
皇子：武帝 劉徹（第7代皇帝）、広川恵王 劉越、膠東康王 劉寄、清河哀王 劉乗、常山憲王 劉舜、趙敬粛王 劉彭祖、中山靖王 劉勝、臨江閔王 劉栄、河間献王 劉徳、臨江哀王 劉閼于、魯恭王 劉余、江都易王 劉非、膠西干王 劉端、長沙定王 劉発

特に、第11子の劉徹は後の武帝であり、前漢を代表する名君として知られています。また、中山靖王・劉勝は、蜀漢の創始者である劉備の祖先とされています。さらに、長沙定王・劉発は、後漢の創始者である光武帝・劉秀の祖先とされています。

登場作品

景帝は、歴史ドラマにも登場しており、以下の作品でその姿を見ることができます。

『漢武大帝』（2004年、中国）
『劉邦の大風歌 -漢建国記-』（2009年、中国）
『美人心計〜一人の妃と二人の皇帝〜』（2012年、中国）

これらの作品を通して、景帝の生涯や業績に触れることができます。

景帝は、父の文帝と共に漢王朝の基盤を固めた名君であり、その治世は「文景の治」として後世に語り継がれています。彼の政策は、内政の安定と経済発展をもたらし、後世の皇帝にも大きな影響を与えました。

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