智尊

智尊（ちそん）

智尊は、飛鳥時代に存在した人物です。姓（カバネ）を持たず、『日本書紀』にその名が登場するのみで、詳しい出自や系譜は一切不明です。

壬申の乱での活躍

672年、壬申の乱において、智尊は大友皇子（弘文天皇）側の武将として戦いました。当時、戦局は大友皇子にとって不利であり、敵軍が都である近江大津宮に迫る中、大友皇子は自ら軍を率いて出陣しました。智尊は、その先鋒を任され、瀬田の橋を守備する重要な役割を担いました。

瀬田の戦い

瀬田の戦いでは、智尊は精兵を率い、橋を厳重に守りました。彼は、橋の中央部分を三丈（約9メートル）切り離し、その間に長い板を一つおきに設置し、綱で結びました。この仕掛けは、敵が板を踏んで渡ろうとすると、綱を引いて落とすというもので、敵軍の侵攻を食い止めるための知略でした。

しかし、敵軍の大分稚臣がこの策を見破り、鎧を重ね着して突進し、板を渡って綱を切断しました。これにより、智尊の軍勢は混乱し、逃げ出す兵士が続出しました。智尊は刀を抜き、退却する兵を斬りつけて食い止めようとしましたが、戦況を覆すことはできませんでした。智尊は、橋の近くで壮絶な最期を遂げました。

智尊の死と壬申の乱の終結

智尊の戦死後、大友皇子は翌日、自害し、壬申の乱は終結しました。智尊の勇敢な戦いは、歴史に名を刻みましたが、その出自や背景については謎に包まれています。

渡来人説

智尊の名前は、当時の日本人の名前としては珍しく、渡来人ではないかという推測があります。しかし、それを裏付ける確たる証拠は見つかっていません。

参考文献

* 『日本書紀』天武元年是歳条

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