暗黒女子

『暗黒女子』

秋吉理香子によるミステリー小説『暗黒女子』は、名門ミッション系女子高を舞台に、一人の女子生徒の死を巡る複雑な人間関係と、衝撃的な真相を描いた作品です。2012年から2013年にかけて小説推理に連載され、その後単行本として出版されました。

あらすじ

物語の舞台は、聖母女子高等学院。この学園で絶大な人気を誇るカリスマ、白石いつみが、スズランの花を持って屋上から謎の死を遂げます。学園内では、「いつみが主宰していた文学サークルのメンバーの中に犯人がいる」という噂が広まります。

いつみの親友である澄川小百合は、サークルの会長を引き継ぎ、学期末恒例の闇鍋パーティーで、部員たちが自作した小説の朗読会を開催します。朗読のテーマは「白石いつみの死」。部員たちは、それぞれが思う犯人を告発する物語を発表していく中で、隠された真実が明らかになっていきます。

朗読会と告発

5人の部員たちが物語を朗読し終えた後、澄川小百合が自らの物語を語り始めます。それは、なんと「白石いつみによる告白文」でした。いつみは、教師の北条慎二と恋人関係にあり、その密会場所として文学サークルを利用していました。また、彼女は部員たちの秘密を握り、支配することで優越感を得ていたのです。

いつみの告白により、部員たちの秘密が次々と暴かれます。海外作品の盗作、実家の放火、援助交際、姉の留学の横取り、成績の改ざんといった、それぞれが抱える闇が明らかになります。また、いつみは、父親に北条との関係を突き止められ中絶を強いられたため、部員たちへの復讐を計画していたのでした。

狂言自殺と復讐

部員たちを集めたいつみは、子供の名前にしようとしていたスズランを持ち、屋上から飛び降ります。しかし、これは狂言自殺でした。実は、退院後、いつみは北条と駆け落ちをしており、父親がスキャンダルを避けるために、彼女を死亡したことにしていたのです。

いつみは、闇鍋にスズランの毒を仕込み、小百合以外の部員たちを殺害しようとします。部員たちがパニックに陥る中、これまでいつみを扇動してきた澄川小百合が、衝撃的な告白を始めます。実は、駆け落ちしたいつみは、ただの平凡な女性になっており、その姿に失望した小百合が、定例会前にいつみを殺害。その肉を闇鍋の具材として提供したというのです。そして、自らが「主役」となった小百合は、新たな部員を勧誘するのでした。

登場人物

澄川 小百合（すみかわ さゆり）: 文学サークルの会長。いつみの死の真相を追う。物語のキーパーソン。
白石 いつみ（しらいし いつみ）: 故人。文学サークルの元会長。学園のカリスマ的存在。物語の中心人物。
二谷 美礼（にたに みれい）: 1年生。貧しい家庭出身。いつみの弟の家庭教師をしていた。
小南 あかね（こみなみ あかね）: 2年生。料亭の娘だが、洋食やスイーツ作りに興味がある。
ディアナ・デチェヴァ: ブルガリアからの留学生。いつみに好意を抱いている。
古賀 園子（こが そのこ）: 3年生。医師を目指す、合理的な思考の持ち主。
高岡 志夜（たかおか しよ）: 2年生。帰国子女の作家。自分の作品の翻訳や映像化を拒んでいる。

書誌情報

小説
単行本：2013年6月19日 双葉社 ISBN 978-4575238259
文庫：2016年6月16日 双葉社 ISBN 978-4575518955
ジュニア文庫：2017年3月15日 双葉社 ISBN 978-4575240238
漫画
兄崎ゆなによる漫画版が刊行されている。
上巻：2017年2月21日 双葉社 ISBN 978-4575312232
下巻：2017年2月21日 双葉社 ISBN 978-4575312249

映画

2017年4月1日に同名タイトルで映画が公開されました。

監督: 耶雲哉治
主演: 清水富美加、飯豊まりえ

キャスト

澄川 小百合：清水富美加
白石 いつみ：飯豊まりえ
高岡 志夜：清野菜名
ディアナ・デチェヴァ：玉城ティナ
小南 あかね：小島梨里杏
二谷 美礼：平祐奈
いつみの父親：升毅
北条：千葉雄大

スタッフ

原作：秋吉理香子『暗黒女子』（双葉文庫）
監督：耶雲哉治
脚本：岡田麿里
音楽：山下宏明
主題歌：Charisma.com「#hashdark」

映画化による変更点

映画版では、原作の一部設定や展開が変更されています。特に、古賀園子が未登場である点が大きな違いです。

まとめ

『暗黒女子』は、複雑に絡み合った人間関係と、衝撃的な真相が魅力のミステリー小説です。朗読会という設定を巧みに利用し、登場人物たちの心理を描き出しています。映画版も公開され、多くのファンを魅了しました。ぜひ、原作と映画の両方をお楽しみください。

もう一度検索