暗黒時代

暗黒時代とは

暗黒時代（Dark Ages）とは、ローマ帝国の崩壊に続く時期、西ヨーロッパにおける人口、文化、経済の衰退を表す歴史的な時代区分です。この時代の特徴は、記録の欠如や知識の低下など、「暗黒」というイメージで語られることが多いです。

この「暗黒」という表現は、往々にして光と闇の対比によって形成されており、それ以前の繁栄した古典古代や、以降のルネサンスと比べて、知的・文化的な成長が停滞したとされます。この考え方の根源には、14世紀のイタリアの学者ペトラルカがおり、彼は古代ローマとその後の世紀を「闇」として評価しました。

さらに、暗黒時代という言葉自体は、ラテン語の「saeculum obscurum」から派生しており、1602年に歴史家カエサル・バロニウスが特に10世紀から11世紀の混乱した期間に適用したのが起源です。この時期は、ローマ社会の崩壊によって多くの文化的成果が失われ、ヨーロッパ全体が停滞していたとされます。

暗黒時代は、広義にはローマ崩壊からルネサンスまでの中世全体を指し、特に18世紀に啓蒙主義が盛んになるにつれて流布しました。しかし、19世紀以降は、この時代の文化的・知的業績が再評価されるようになり、暗黒時代の概念は狭まりました。現代の研究者は、特に中世前期（5世紀から10世紀頃）を指して「暗黒時代」と呼ぶことが一般的です。

さらに、現代の学者たちは、この言葉には否定的な意味が込められているため、誤解を生む危険があるとして、暗黒時代という表現を使うことを避ける傾向があります。ペトラルカが持っていた侮蔑的な意味合いは、今なお大衆文化の中で使われつづけているため、中世全体が暴力的で未成熟な時代であるとする誤解を招いています。

脚注と関連項目

このようにして、暗黒時代は歴史的な理解を深めるうえでの重要な概念ですが、その理解には慎重さが求められます。関連項目としては、キリスト教、ゲルマン人、ジャーヒリーヤ（イスラームにおける無明時代）、黄金時代、古代末期、さらには中世自体が挙げられます。また、暗黒時代に関する研究として、小野晶による「世界史教科書にみる中世とルネサンスの記述」が引用できます。

この時代を適切に理解することは、今後の歴史研究にとっても極めて重要なテーマです。

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