暫定予算

暫定予算とは

暫定予算とは、会計年度の開始日までに本予算が国会で成立しない場合に、本予算成立までの期間を繋ぎ止めるために一時的に編成される予算のことです。通常、数週間から2ヶ月程度の期間を対象とし、必要最低限の経費のみが計上されます。

暫定予算の概要

本予算の成立が遅れる主な原因は、予算編成の遅延や国会での審議の長期化です。暫定予算では、新規事業の費用は原則として含まれず、人件費などの経常的経費や、継続中の公共事業に必要な費用など、必要不可欠な項目に限られます。暫定予算は、政府が作成し、国会の承認を得て成立します。

本予算が成立すると、暫定予算はその役割を終え、本予算に吸収される形で終了します。日本の財政法第30条には、必要に応じて暫定予算を編成できる旨が定められています。ただし、当初予算または暫定予算が年度開始前に成立しない場合の予算の執行については、現行法では明確に規定されていません。

過去の事例

かつては、野党が国会での審議を意図的に長引かせ、予算の年度内成立を阻止する戦術がとられることがありました。1972年から1992年までの21年間は、予算が年度内に成立しなかったものの、そのうち12回は暫定予算が編成されています。1990年代に入り、政権交代が頻繁に起こると、予算成立が遅れるケースが増加しました。例えば、1994年度、1996年度、1998年度には、それぞれ政治的な混乱や不祥事が原因で暫定予算が組まれています。

近年では、国会審議に対する国民の目が厳しくなり、野党も予算の成立を遅らせるよりも、内容を重視する傾向にあります。そのため、予算成立の遅延や暫定予算の編成は減少傾向にあります。近年では、2012年度に東日本大震災の影響で本予算の審議が遅れ、暫定予算が編成されました。また、2013年度と2015年度には、衆議院選挙の影響で予算編成が遅れたために暫定予算が組まれています。

過去には、1953年に本予算が成立しないまま衆議院が解散し、異例の事態として数回にわたり暫定予算を編成した事例や、1948年に4回にわたって暫定予算を編成した事例も存在します。また、1994年度には、政治改革関連法案の審議を優先した結果、暫定予算の補正予算を編成するという異例の事態も発生しました。

大日本帝国憲法下との比較

大日本帝国憲法下では、第71条により本予算が年度開始前に成立しない場合、前年度の予算が自動的に新年度の予算として執行される規定が存在したため、暫定予算という概念は存在しませんでした。

地方自治体およびNHKにおける暫定予算

地方自治体においては、地方自治法第218条に基づき、本予算が年度開始前に成立しない場合や、地方公共団体の分置廃合があった場合などに、暫定予算を編成することができます。特に緊急を要する場合には、首長の専決処分によって暫定予算を成立させることが可能です。

日本放送協会（NHK）の予算は、放送法70条により国会の承認が必要ですが、承認が得られない場合には、同法71条に基づき、総務大臣の認可を得て3ヶ月以内の暫定予算を施行することができます。

まとめ

暫定予算は、本予算成立までの期間を繋ぐための、重要な財政措置です。過去の事例や関連法規を理解することで、国の財政運営における暫定予算の役割をより深く理解することができます。

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