暮露暮露団

暮露暮露団：古びた布団から生まれた妖怪

暮露暮露団（ぼろぼろとん）は、日本の妖怪の一種です。江戸時代中期の画家、鳥山石燕が描いた妖怪画集『百器徒然袋』に登場する妖怪として知られています。古くなってボロボロになった布団が、様々な事情で捨てられずに残された結果、妖怪の姿へと変化したという、独特な誕生譚を持っています。

しかし、この妖怪に関する具体的な民間伝承は確認されておらず、鳥山石燕による創作である可能性が高いとされています。多くの妖怪画が既存の伝承を元に描かれている中、暮露暮露団は、石燕の想像力から生まれた、いわばオリジナルの妖怪と言えるでしょう。

『百器徒然袋』に描かれる妖怪の中には、『徒然草』をモチーフとしたものが多いとされています。暮露暮露団の解説においても、「ぼろぼろ」という語が、普化宗の僧侶を指す言葉として用いられている点が注目されます。『徒然草』第百十五段には、ぼろぼろの僧侶に関する記述があり、この話が暮露暮露団の創作に何らかの影響を与えた可能性が考えられます。

つまり、古びてボロボロになった布団という視覚的なイメージと、『徒然草』の「ぼろぼろ」という記述、そして普化宗の僧侶を連想させる言葉遊びが組み合わさり、暮露暮露団という妖怪が生まれたのではないかという説が有力です。この説が正しければ、石燕のユーモラスな発想と、既存の文学作品への深い知識が、この妖怪の誕生に繋がったと言えるでしょう。

暮露暮露団の容姿は、まさにボロボロの布団そのものといった風貌です。具体的な姿形については、絵画によって多少の違いが見られますが、全体的に古びて破れた布団が妖怪の姿へと変容した様子が描かれています。その姿からは、廃棄されることなく、長い時間をかけて蓄積された古びたものの霊的な側面が感じられます。

暮露暮露団は、他の妖怪のように人々を襲ったり、危害を加える存在として描かれていません。むしろ、古びた布団という、日常生活に密着したものの妖怪化という点で、他の妖怪とは一線を画しています。これは、鳥山石燕が、身近な物事にも霊的な存在を見出そうとした、独特な視点の表れと言えるのかもしれません。

このように、暮露暮露団は、その誕生の経緯や、他の妖怪とは異なる特徴から、鳥山石燕という画家の個性と想像力の豊かさを示す、興味深い妖怪と言えるでしょう。その姿からは、古びたものの持つ独特の雰囲気や、廃棄されることなく残されたものへの何らかの霊的な意味合いを感じ取ることができます。 これからも、暮露暮露団は、妖怪研究において重要な存在として、人々の想像力を刺激し続けることでしょう。

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