普化宗

普化宗（ふけしゅう）とは

普化宗は、禅宗の一派であり、9世紀の中国にその起源を持つとされています。臨済宗の祖である臨済義玄と交流があったとされる普化禅師を始祖と仰ぎますが、その実態は伝説的な要素が強く、神異の僧として語られることが多いです。別名「虚無宗」とも呼ばれ、虚鐸（尺八）を吹きながら旅をする虚無僧の存在で広く知られています。

歴史

普化宗が日本に伝わったのは13世紀のことです。1249年、禅僧の心地覚心が中国（南宋）に渡り、普化宗の僧である張参の弟子たちと共に帰国したことが始まりとされています。彼らは紀伊由良の興国寺に庵を構え、普化宗の教えを広めました。帰化した4人の居士はそれぞれ弟子を育て、16の派に分かれていたと伝えられます。

その後、金先と括総という2人の弟子を中心とした派閥が勢力を拡大し、他の派を吸収、あるいは支配下に置きました。金先派は、北条経時の帰依を受け、下総国小金（現在の千葉県松戸市小金）に一月寺を建立し、総本山としました。一方、括総派は、武蔵野国幸手藤袴村（現在の埼玉県幸手市）に鈴法寺を建立し、同じく総本山となりました。

普化宗が宗派として活動を始めたのは近世に入ってからです。江戸時代には、虚無僧集団による特殊な宗派としての側面が強くなり、教義や信仰よりも、尺八を法器として禅の修行や托鉢に用いることが重視されました。幕府は1614年に「慶長之掟書」を定め、虚無僧の資格や服装などを組織化し、諸国通行の自由といった特権を与えました。このため、虚無僧が隠密活動を行っていたという説も存在します。

しかし、江戸幕府との関係性や身分制度の名残から、明治時代には政府によって1871年に解体されることになりました。一月寺はその後日蓮正宗の寺院となり、鈴法寺は廃寺となりました。しかし、尺八の流派は現在も残っており、尺八楽の歴史において重要な役割を果たしています。1950年には、宗教法人として普化正宗明暗寺が再興されました。

普化宗の諸流

普化宗には16の流派があったとされていますが、諸説があります。主な流派としては、金先派、括総派の他に、以下のものが挙げられます。

金先
奇竹
梅土
不智
養沢
芝隣
義文
隠巴
宗和
錐南
短尺
野木
児派
括総
小菊
根笹

参考文献

山下彌十郎著『虚無僧-普化宗鈴法寺の研究-』多摩郷土研究の会、1972年（昭和47年）
武田鏡村著『虚無僧-聖と俗の異形者たち-』三一書房、1997年12月

関連項目

楠木正勝 - 楠木正成の孫。高僧の虚無は、南朝総大将の正勝が、南朝崩壊後に世を儚んで出家した身だったという伝説があります。

外部リンク

普化宗尺八
* 普化宗の「一音成仏」と「音声説経」について - ウェイバックマシン（2014年4月24日アーカイブ分）

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