暴力に反対する公衆

暴力に反対する公衆（VPN）とは

暴力に反対する公衆（スロバキア語：Verejnosť proti násiliu、略称：VPN）は、1989年11月19日にブラチスラヴァで結成された政治運動組織です。当時のチェコスロバキア社会主義共和国における民主化運動、いわゆるビロード革命を推進した、スロバキア社会主義共和国内の非共産党系勢力によって組織されました。

結成の背景と民主化運動

VPNは、チェコにおける市民フォーラム（OF）と連携し、民主化運動を主導しました。1990年には複数政党制下で行われた連邦議会選挙とスロバキア国民議会選挙で第一党となり、連邦政府と共和国政府で連立政権の中核を担いました。この結果は、長年の共産党一党支配からの転換を意味し、チェコスロバキアの政治体制に大きな変化をもたらしました。

分裂とその後

しかし、1991年5月、スロバキア政府の首相であったヴラジミール・メチアルが民主スロバキア運動（HZDS）を結成したことで、VPNは分裂しました。この分裂は、スロバキアの政治情勢に新たな局面をもたらし、後の国家解体にも影響を与えることになります。

分裂後、VPN内のリベラル派は同年10月に市民民主連合（ODU）を結成し、連邦維持を掲げて1992年選挙に挑みました。しかし、議席阻止条項である得票率5％を超えることができず、議席獲得はなりませんでした。この結果は、スロバキアにおける連邦維持を支持する勢力の衰退を示すものでした。

選挙結果

1990年チェコスロバキア連邦議会選挙
人民院：19議席（得票率32.54％）/49議席
国民院：33議席（得票率37.28％）/75議席

1990年スロバキア共和国国民評議会選挙：48議席（得票率29.35％）/150議席

これらの選挙結果は、VPNが当初、国民から大きな支持を得ていたことを示しています。しかし、その後の分裂と政治情勢の変化により、勢力は大きく後退しました。

まとめ

暴力に反対する公衆（VPN）は、チェコスロバキアの民主化において重要な役割を果たした政治組織でした。しかし、内部の分裂や政治情勢の変化により、その勢力は衰退しました。VPNの歴史は、東欧における民主化の道のりの複雑さと、その後の政治的変遷を理解する上で重要な事例と言えるでしょう。

参考文献
* ポスト 社会主義諸国の政党・選挙データベース作成研究会 編『CIAS Discussion Paper No.9 ポスト社会主義諸国 政党・選挙ハンドブックⅠ』 (PDF) （京都大学地域研究統合情報センター）

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