ヴラジミール・メチアル

ヴラジミール・メチアル（Vladimír Mečiar、1942年7月26日 - ）は、スロバキアの政治家であり、人民党・民主スロバキア運動（ĽS-HZDS、旧・民主スロバキア運動）の党首として知られています。彼は、1992年にチェコスロバキア連邦共和国を連邦解体（ビロード離婚）に導いた人物の一人であり、チェコとの連邦解消後には、首相を二度にわたって務めました。

生い立ちと社会主義時代

メチアルは、仕立屋の長男としてズヴォレン市で生まれました。1962年にチェコスロバキア共産党に入党し、中部スロバキア県（現・バンスカー・ビストリツァ県）ジアル・ナト・フロノム市の市委員長を歴任しました。しかし、1968年のプラハの春を支持し、改革に賛同する演説を国会で行ったため、1970年に党から除名されました。その後はガラス工場の労働者として働きながら、コメニウス大学を卒業しました。

民主化運動への参加と首相就任

1989年のビロード革命において、メチアルは非共産主義政治組織「暴力に反対する公衆」（VPN、Verejnosť proti násiliu）に参加しました。1990年にはスロバキア政府の内務環境相に就任し、同年6月の民主化後初の総選挙でスロバキア政府首相に選出されました。しかし、連立政権を組んでいた民主キリスト教連合との政策的な違いから、1991年4月に辞任し、VPNは分裂しました。その後、新たに民主スロバキア運動（HZDS）を結成し、党首となりました。

連邦解体と初代首相

1992年6月の連邦議会選挙では、民主スロバキア運動が第1党となり、チェコのヴァーツラフ・クラウス率いる市民民主党と政策方針を巡って対立しました。その結果、両党首の会談によって連邦解消が決定され、1993年1月1日にスロバキア共和国が誕生し、メチアルは初代首相に就任しました。

権威主義的な政治手法と失脚

しかし、メチアルの強引な政権運営に対して内部から反発が起こり、1993年3月には議員8人が民主スロバキア運動を脱退しました。1994年3月には首相を辞任し、ヨゼフ・モラウチークによる大連立内閣が成立しました。同年10月の総選挙では民主スロバキア運動が勝利し、再びメチアルが首相に返り咲きましたが、彼の政治手法は非民主的で権威主義的なものだったため、他の欧州諸国から強い批判を受けました。また、市場経済の仕組みに則らない経済政策も失敗し、経済の低迷と高い失業率が続いたため、国民の支持を失いました。1998年9月の総選挙で敗北し、反メチアル政党「スロバキア民主連合」（SDK）の党首であるミクラーシュ・ズリンダ率いる連立政権が発足しました。

その後

下野後も、メチアルは民主スロバキア運動（のち「人民党・民主スロバキア運動」に改称）の党首に留まりました。2006年6月の総選挙では、人民党・民主スロバキア運動の得票率が史上最低の8.79%に終わり、議席を大幅に減らしましたが、民族主義政党のスロバキア国民党（SNS）とともに、第1党となった中道左派の方向・社会民主主義（SMER-SD）と連立政権を樹立し、ロベルト・フィツォ内閣に閣僚を送り込みました。2010年の国民議会選挙では、得票率が5％を超えられず、全議席を失い、2013年に政界を引退しました。

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