曲り家

曲り家（まがりや）の概要

曲り家とは、日本の伝統的な農村建築様式であり、特にL字型の平面形状が特徴的です。この建物は、母屋と馬屋が一体となった設計で、その形状から「曲り家」という名称が付けられています。国中に広がるこのスタイルには、地域によって様々な呼び名が存在し、曲家、曲屋、曲がり屋などとも称されます。

定義と形態

曲り家の定義は広義に解釈され、直屋と対比しながらL字型の平面を持つ家屋とされています。日本の農村部には様々なタイプの曲り家が存在しますが、特に認知度の高い「南部曲り家」（南部曲屋）は、その特色において中門造住宅とよく比較されます。中門造民家は、その特有のな曲り部に入口があり、その先端に位置する中門口が特徴です。一方、南部曲り家にはそのような入口が存在しないことが、性格上の大きな違いとなっています。

外観の特徴

曲り家の外観にはいくつかの特色があります。元々、屋根は茅葺きが用いられ、母屋は寄棟、厩側は入母屋または寄棟で設計されています。屋根を支える構造において、右厩タイプと左厩タイプが存在し、それぞれの地域での偏りが見られます。特に遠野盆地の周辺では、左厩タイプが多く観察されています。

内部間取りの特徴

内部は、主に家畜飼養空間、作業や収納スペース、居住空間の3つに分かれています。特に遠野では、家の東側に台所が配置されており、南側に厩がつながっています。この設計は、台所からの暖気が厩に流れ込み、馬を温める効果を狙っています。

南部系曲り家の成立と分布

南部曲り家の成立は、18世紀中頃にさかのぼることが可能です。この家屋スタイルは、盛岡藩が馬の飼育を奨励した結果として広まったとも言われていますが、史料は乏しく、様々な家格の表示もその普及に影響を与えた要素とされています。南部曲り家は、主に岩手県南部領域に見られ、特に馬産地である地域に多く、盛岡市や遠野市がその中心として知られています。

とはいえ、南部曲り家は現在減少傾向にあり、その背景には農業の兼業化や大型機械の導入、茅葺屋根の修理困難化など、様々な社会的・経済的要因が影響しています。また、家の構造や生活スタイルの変化もその要因の一部として挙げられます。

南部曲り家の残存と継承

現在も残されている南部曲り家は、居住用として続けられているものと、物置として利用されているものがあります。これらは積極的に伝統を維持しようとする意識や、相対的な経済的困難が影響していると考えられています。多くの残存した家屋は、現代のライフスタイルに応じて改造されてはいるものの、茅葺屋根を保持している例も少なくありません。

中門造系の特徴

南部曲り家との違いから中門造系の曲家は、曲り部の先端に入口があることが特徴で、土間が直接通じています。他の地域の農村家屋にも共通する要素が見られることがありますが、杉浦直は、こうした異なる要素も考慮する必要があると指摘しています。これにより、農村建築の多様性や地域特有の文化が色濃く表れていることがわかります。

曲り家は日本の文化と伝統を象徴する建築スタイルであり、その形や構造には地域特性が反映されています。

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