書割

書割（書き割り）の世界：舞台芸術から映画、そして現代表現へ

舞台芸術、特に歌舞伎において重要な役割を担う「書割（かきわり）」は、背景などを平面的に描いた大道具です。その語源は、木枠に張った紙や布に描かれた背景が、複数のパネル状に分割されている（「割って」使える）ことに由来すると言われています。また、建物の壁や柱を定規で線を引くように描く様式から名付けられたという説もあります。

書割は、歌舞伎のみならず、映画やその他の映像表現においても広く用いられています。背景を効果的に表現し、舞台や画面の世界観を構築する上で欠かせない存在です。

歌舞伎における書割

歌舞伎の書割製作は、伝統的な分業体制で行われます。背景画家の担当する屋外風景や建物内部の襖絵、そして塗り方が担当する建物構造など、それぞれの専門家がそれぞれの技術を活かして制作にあたります。

特に遠景を描く書割は「遠見」と呼ばれ、野遠見、山遠見、海遠見、庭遠見、町屋遠見、宮遠見など、様々な種類があります。文脈によっては、「遠見」以外の書割を狭義の「書割」と呼ぶこともあります。

映画における書割

映画においても書割は重要な役割を果たしてきました。初期の映画製作者であるジョルジュ・メリエスは、自作の背景に細部までこだわった書割を用いていました。また、1920年の映画『カリガリ博士』では、表現主義的な歪んだ空間表現のために、徹底的に書割を用いたセットが構築されました。

現代の映画では、鉄骨などを用いた大規模な書割セットも珍しくありません。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンなど、映画スタジオをテーマにしたテーマパークでは、グッゲンハイム美術館などを模した恒久的な書割が設置され、来場者に映画の世界観を体感させる演出となっています。

書割と現代技術

近年では、マットペインティング技術との組み合わせや、デジタル技術を活用した新しい表現方法も生まれています。マット・アートを指して「書き割り」と表現することもあります。これにより、より複雑で現実的な、あるいは逆に幻想的な背景表現が可能になっています。

書き割り効果

立体視技術であるステレオ写真において、背景と人物がはっきりと分離して見えるにも関わらず、人物が平面的にしか感じられない現象があります。これは「cardboard cut-out phenomenon（厚紙の切り抜き現象）」と呼ばれ、日本語では「書き割り効果」と呼ばれています。これは、奥行き感が不足することによって生じる錯覚です。

ジオラマにおける「書き割り」

プラモデルなどのジオラマ制作においても、「書き割り」という言葉は用いられます。中心となる主題（例えば、戦車のプラモデル）以外の背景、たとえそれが立体的に制作されているものであっても、背景となる要素を「書き割り」と呼ぶ場合があります。

まとめ

書割（書き割り）は、歌舞伎から映画、そして現代の映像表現まで、長きにわたって舞台芸術や映像制作に貢献してきた重要な技術です。その歴史、技術、そして現代における活用方法を理解することで、作品の見方や制作方法に対する理解が深まるでしょう。今後も様々な表現方法と融合し、進化を続けることでしょう。

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