曽文県

曽文県（そうぶんけん）は、1945年3月に重慶国民政府が策定した「台湾接管計画綱要地方政制」の中で定められた、台湾における行政区画の一つ（一級県）として計画されました。

沿革

曽文県は、台湾南部に位置し、日本統治時代の新営郡と曽文郡を統合して設立される予定でした。この計画は、第二次世界大戦終結後の台湾における新たな行政体制の構築を目指したものでした。

しかし、1945年10月、台湾での軍政の責任者であった陳儀（ちんぎ）は、「台湾接管計画綱要地方政制」の実施が現状にそぐわないと判断し、一部の改編措置を見送りました。その際、曽文県の設置も先送りにされることとなりました。

さらに、1950年に国共内戦で敗れた国民政府が台湾へ遷都したことにより、「台湾接管計画綱要地方政制」自体が廃止されることになりました。これにより、曽文県設置の法的根拠も失われ、実際に使用されることなく、計画のみで消滅することとなりました。

この計画は、戦後の台湾における行政区画の再編を試みたものでしたが、その後の政治情勢の変動によって実現には至りませんでした。曽文県は、台湾の行政史において、幻の行政区画としてその名を残すこととなりました。

この曽文県の計画は、戦後台湾の行政区画がどのように変遷したかを理解する上で重要な事例であり、計画されたものの実現しなかった行政区画の一例として、歴史的な視点から興味深いテーマとなっています。

参考文献

* 施亜軒 『台湾的行政区変遷』（2003年 台北 遠足文化出版社）

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