台湾接管計画綱要地方政制

台湾接管計画綱要地方政制とは

「台湾接管計画綱要地方政制」は、1945年3月に中華民国国民政府によって策定された、台湾接収計画「台湾接管綱要」の一部を構成するものです。これは、日中戦争終結後に台湾を接収するにあたり、台湾の地方行政制度を整備することを目的としていました。内容は、日本統治時代の5州3庁9市を、11市、8一級県、18二級県、3三級県へと再編し、さらに不適切と判断された地名を変更するというものでした。一方で、日本統治時代に存在した保甲制度は存置される方針でした。

しかし、国民政府は、この計画が現実的ではないと判断しました。そのため、1945年10月15日に行政長官公署が台湾を接収し台湾省を設置した後に、台湾地方政制を実施しました。この時、日本統治時代の行政区分を修正し、台湾の地方行政を定める基本方針としました。その後、1950年に国共内戦の影響で中華民国政府が台湾に移転したことで、この制度は廃止され、新たに「台湾省各県市実施地方自治綱要」が施行されました。

背景

1943年のカイロ会談において、連合国は日本に対し、「日本国が清国人より盗取したる満洲と台湾及び澎湖諸島を中華民国に返還すること」を定めました（カイロ宣言）。これを受けて、国民政府は戦後の台湾接収に向けた準備を開始しました。

1944年4月、中央設計局に台湾調査委員会が設置され、陳儀が主任委員に任命されました。調査委員会は、日本統治下の台湾の経済、政治、社会、軍事など各方面について詳細な報告を行い、1945年3月には、陳儀の提言を基に蔣介石が16項83条からなる『台湾接管計画綱要』を策定しました。この綱要は、国民政府委員会によって承認され、台湾接収の青写真および法的な根拠となりました。この中で地方政制に関する条項が「台湾接管計画綱要地方政制」として定められ、接収後の台湾の行政区画を定める基本方針となりました。

地方政制の主要内容と実施状況

国民政府が計画した台湾の地方行政制度の改革内容は以下の通りです。

日本統治時代の街と庄を、それぞれ鎮と郷に変更する。ただし、村里はそのまま援用する。
日本統治時代の台北などの12市は保留とする。しかし、1945年10月に行政長官公署は9市に変更し、花蓮港市、宜蘭[[市]]、梧棲市を県轄市に変更する。
新たに一級県を9県設置し、地理的に関係の深い近隣の日本統治時代の郡を合併して一級県とする。一級県は人口15万人以上とする（実際には、日本統治時代の五州三庁を8県とした）。
新たに二級県を18県設置する（未実施）。
新たに三級県を3県設置する（未実施）。

この計画の特徴は、人口の多寡によって行政区分を決定したことと、将来的な選挙と地方自治を考慮した計画であったことです。また、地名には中国の歴史上の人物名を採用する例もありました。たとえば、嘉義[[市]]は林爽文を顕彰して爽文市に、基隆郡は清朝の巡撫であった劉銘伝の別号を採用して省三県に変更されました。

地方政制の詳細行政区画

計画された行政区画は以下の通りです。

市: 台北[[市]]、基隆[[市]]、宜蘭[[市]]、新竹市、台中[[市]]、彰化市、台南[[市]]、爽文市（旧嘉義[[市]]）、高雄市、屏東[[市]]、花蓮港市、梧棲市（旧新高市）
一級県: 羅東県、七星県、淡水県、桃園県、員林県、北港県、曽文県、延平県、鳳山県
二級県: 省三県、中壢県、滄海県、竹南県、福星県、大甲県、豊原県、霧峰県、鹿港県、北斗県、南投県、斗六県、清芳県、東石県、北門県、淵亭県、東港県、鳳林県
三級県: 恒春県、澎湖県、台東県
郷鎮: 日本統治時代の街と庄を鎮と郷に改称したが、区画は同一
村里: 郷鎮の村は150戸以上、里は200戸以上を原則とし、村里の下部に10戸を原則として鄰を編成し、「村里鄰」の保甲制度に類似した体制とする

行政区画の確定

しかし、国民政府行政長官公署は、台湾地方政制に現実的ではない側面があると考えました。そのため、接収後に実施されたのは、日本統治時代の5州2庁を8県に改編し、その他、基隆、台北、新竹、台中、彰化、嘉義、台南、高雄、屏東の9省轄市（現在の市）を設置するにとどまりました。

1950年に国共内戦で敗れた中華民国政府が台湾に移転した後、「台湾省各県市実施地方自治綱要」に基づき、16県、5省轄市、1管理局（陽明山管理局）、36郷、鎮、県轄市が設置され、郷鎮および県轄市は県の所管と定められました。その後、陽明山管理局が廃止されるなど一部修正がありましたが、現在に至るまでこの制度が用いられています。

参考文献

施亜軒　『台湾的行政区変遷』（2003年 台北 遠足文化出版社）

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