曽根泰教

曽根 泰教（そね やすのり）

1948年1月11日生まれ。日本の政治学者であり、政策分析論を専門としています。慶應義塾大学にて長年にわたり教育・研究活動に従事し、現在は同大学名誉教授の称号を有しています。

経歴

曽根泰教氏は神奈川県で生を受けました。神奈川県立厚木高等学校を経て、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業。さらに同大学大学院法学研究科に進み、修士課程および博士課程を修了しています。

大学卒業後、1972年に母校である慶應義塾大学法学部の助手に就任しました。その後、1975年に専任講師、1979年には助教授へと昇進し、1985年には同法学部教授を務めることになります。1990年からは新たに設立された総合政策学部の教授として教鞭を執り、1994年以降は大学院政策・メディア研究科の教授も兼任しました。2018年3月31日をもって慶應義塾大学を退職し、名誉教授となりました。

この間、研究活動の幅を広げるため、国内外の主要な研究機関で客員研究員や客員教授として招聘されています。具体的には、イェール大学政治学部、オーストラリア国立大学、エセックス大学政治学部、ハーバード大学国際問題研究所などでの滞在経験があります。

研究活動と業績

曽根氏の主要な専門は政治学と政策分析論にあります。政策の決定過程やその分析手法について深く探求してきました。

主な単著としては、『決定の政治経済学――その理論と実際』（有斐閣）、『現代の政治理論』（放送大学教育振興会）、『日本ガバナンス――「改革」と「先送り」の政治と経済』（東信堂）などがあります。また、共著や共編著も多数手掛けており、『ビジュアル・ゼミナール日本の政治』（日本経済新聞社）、『政治学』（有斐閣）、『世界政治のなかの日本政治』（有斐閣）、『大政変・同時進行分析』（東洋経済新報社）、『変動期の日韓政治比較』（慶應義塾大学出版会）、『日本の民主主義』（慶應義塾大学出版会）など、幅広いテーマに関する著作があります。さらに、James S. Fishkin氏の著書『人々の声が響き合うとき』の監修も行っています。

近年、特に注目されているのは「討論型世論調査（Deliberative Polling）」に関する提唱と実践です。これは、ジェイムズ・フィシュキン氏らと共に推進しているもので、市民が十分な情報と議論を経て形成する意見を収集・分析する手法として、民主主義の質を高める可能性を秘める研究として知られています。

その他の活動

大学での教育・研究活動に加えて、曽根氏は社会における様々な議論や政策形成の場にも関与してきました。例えば、「新しい日本をつくる国民会議」では主査を務め、政策提言に関わっています。また、慶應義塾大学DP研究センター長として、討論型世論調査の研究推進を主導しました。「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の実行委員会委員長や、公益財団法人日本国際フォーラムの政策委員なども歴任しています。

ある誤情報に基づく騒動

2017年5月、作家の阿川佐和子氏が週刊誌に掲載した手記の中で、慶應義塾大学の「S元教授」（当時69歳）との結婚について記述しました。この「S元教授」を、現役の慶應義塾大学教授であった曽根泰教氏と誤解する向きが多数生じました。この誤解により、曽根氏のもとには、教え子や同僚、旧知の友人などから多くの問い合わせや、年賀状での祝福が寄せられるといった状況が発生しました。

こうした誤解が広がる状況に対し、曽根氏は弁護士を通じて、事実とは異なる情報を広めたブログ記事の削除を要請しました。その結果、33本に上る記事が削除されることとなりました。

曽根氏は、政治学・政策分析の分野における教育者・研究者として、多岐にわたる著作や国内外での活動を通じて学術界に貢献するとともに、討論型世論調査のような新たな手法の提唱を通じて、社会における熟議の重要性を訴え続けています。

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